news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

カナダ保健省の室内空気評価値

カナダ保健省は、原則として、カナダの住宅で頻繁に検出される物質に対して室内空気質ガイドラインを設定してきました。但しその他の物質であっても、公衆衛生専門家が建物の室内で検出される物質に対してそのリスクのレベルを判断するために、何らかの評価値が必要と考えられるようになりました。そこで室内で検出される物質のリスクレベルを判断するための評価値として、室内空気評価値(Indoor Air Reference Levels: IARLs)を2018年2月から提供し始めました。

この評価値は、カナダの室内空気質ガイドラインの付属書として位置づけられています。カナダの室内空気評価値の概要を以下に示します。この評価値は、カナダ保健省で独自に導出したものではなく、米国環境保護庁、米国カリフォルニア環境保護庁、米国毒物疾病登録庁などの有害性評価値をそのまま用いており、数ヶ月から年単位の長期間曝露に適用されます。

化学物質名(CAS番号):室内空気評価値(影響指標)
1,3-ブタジエン(106-99-0):1.7 µg/m3(白血病)
1,4-ジクロロベンゼン(106-46-7):60 µg/m3(鼻腔への影響)
2-ブトキシエタノール(111-76-2):11000 µg/m3(血液学的影響)
2-エトキシエタノール(110-80-5):70 µg/m3(生殖毒性)
3-クロロプロペン(107-05-1):1 µg/m3(神経毒性)
アセトン(67-64-1):70000 µg/m3(発達毒性)
アクロレイン(107-02-8):0.35 µg/m3(気道への影響)
アニリン(62-53-3):1 µg/m3(脾臓への影響)
四塩化炭素(56-23-5):1.7 µg/m3(副腎の腫瘍)
クロロホルム(67-66-3):300 µg/m3(肝臓と腎臓への影響)
シクロヘキサン(110-82-7):6000 µg/m3(発達毒性)
ジクロロメタン(75-09-2):600 µg/m3(肝臓への影響)
エピクロロヒドリン(106-89-8):1 µg/m3(鼻腔への影響)
エチルベンゼン(100-41-4):2000 µg/m3(腎臓、脳下垂体、肝臓への影響)
酸化エチレン(75-21-8):0.002 µg/m3(リンパ系のがん、乳がん)
イソプロパノール(67-63-0):7000 µg/m3(腎臓への影響)
イソプロピルベンゼン(98-82-8):400 µg/m3(腎臓と副腎への影響)
メチルエチルケトン(78-93-3):5000 µg/m3(発達毒性)
メチルイソブチルケトン(108-10-1):3000 µg/m3(心奇形)
プロピオンアルデヒド(123-38-6):8 µg/m3(鼻腔への影響)
酸化プロピレン(75-56-9):2.7 µg/m3(鼻腔がん)
スチレン(100-42-5):850 µg/m3(神経毒性)
テトラクロロエチレン(127-18-4):40 µg/m3(神経毒性)
トルエンジイソシアネート(26471-62-5):0.008 µg/m3(肺機能の低下)
キシレン(1330-20-7):100 µg/m3(神経毒性)

Health Canada. Indoor Air Reference Levels.
https://www.canada.ca/en/health-canada/services/publications/healthy-living/indoor-air-reference-levels.html

0 comments
Submit comment