news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

デンマークにおけるフタル酸エステル類規制の動向

フタル酸エステル類は、主に塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)の可塑剤として使用されています。可塑剤とは、樹脂を柔らかくする添加物です。他にも、溶剤、洗剤、繊維の潤滑剤、香料の保留剤、人工皮革など多くの製品に使用されています。

デンマークでは、2013年12月1日から、以下の4つのフタル酸エステル類を含む、室内で使用される製品の輸入と使用を禁止すると発表していました。一般的に、プラスチックに対するフタル酸エステル類の含有量は、数%から数十%必要であるため、0.1%の基準は実質的には使用禁止に相当する行政措置でした。

1.規制対象物質
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)
フタル酸ブチルベンジル(BzBP)
フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)
フタル酸ジ-イソブチル(DIBP)

2.規制対象製品
1)上記4物質の1つ以上を0.1%重量以上含む室内用途の製品
2)上記4物質の1つ以上を0.1%重量以上含み、皮膚や粘膜経由で曝露する製品

これは、欧州を中心とした研究で、フタル酸エステル類を含む室内ダストとアレルギー疾患や喘息症状との関係が示唆されてきたことが一因で、室内での曝露を最小限化するものでした。

これらの情報は、2013年4月のトピックで紹介していました。

ところがこの規制に対して、欧州委員会から、手続き上の問題やリスクに関する科学的根拠の不足等の指摘により、デンマークは本政令の施行を断念して2014年7月に撤回しました。

最近では、スウェーデンが、国内でフタル酸エステル類に対する対策を強化するための提案を2014年12月に行っています。具体的には、欧州連合レベルで特定の成形品(アクセサリー、グルーブ、バッグ、衣類、自動車、家具、スポーツ用品、靴、内装建材など)中の特定のフタル酸エステル類の含有量を欧州化学品規制(REACH)で規制するよう提案しています。

デンマークの規制に対しては、関係業界等からの反発もかなりあったと思われ、最終的にデンマークは規制を断念しました。ただし、フタル酸エステル類の健康影響に関する研究結果を共同で発表してきたスウェーデンが動き始めるなど、当面論争が続きそうです。

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