山岸ビルヂングの建物の内部は構造が少し複雑で改装後初めて来られた大方の来場者は迷路のようですね、と仰います。
さてこのシリーズで最後となる10月の花も金沢市石引町の商店街の中程にある元薬局をリニューアルした山岸薬局ビルディング内で撮影を行い、公開展示をしたなかから掲載します。
2階に昇るには入口の店舗部分を通り抜けて次の部屋との間を仕切る壁の裏から暗い階段を昇るか庭に面した1.2階通しのガラス張りの前の、私には階高の高い階段を昇るか、どちらの階段を利用しても同じ部屋に辿り着きます。
従って、当初は2階にいける花は遠慮しようと思っていました。
ところが元日本間だった陰影の深い空間こそ、花の花らしさをいけられるのではないかと思い直し、途中で階段を昇り降りしなくてもいいように花材、花器、水などすべてを持ち運び準備を整えてのうえでした。
硝子窓から注ぐ夕暮れの静かな光の中で花の声に耳を開き手を添えて花と私、いい関係を築けたようです。
時季は5月だったこともあって緑の瑞々しい旬中の旬の木々が集まり、折しもこの空間展示(5月13,14日)を企画したキュレーターから香りとともに運ばれてきた路地咲きのバラ、おもた鉢の蓋の上や板敷きの床に置く、散らすなどしてこちらはかるく。
花材 : 紅ヅル ナナカマド 紅スモモ 忍冬 ツルウメモドキ 夏椿 丁字草 薔薇 都忘れ
器 : 吉川正道 白磁おもた鉢