長月 2023

この夏、去年プランターに種を残したままの「天の川」という品種の白い小さなあさがおが酷暑の朝にぽつりぽつりと静かに咲き続けていました。
さて9月の花も金沢市石引町の商店街の中程にある元薬局をリニューアルした山岸薬局ビルディング内で撮影を行い、公開展示をした中から掲載します。

入口の奥の薄暗い廊下を抜けると庭に出る手前に浴室の洗い場だったと思われるモザイク貼りの床と浴槽跡を残したままの小さな部屋があります。
生活空間の中で浴室こそ誰もが何もかも裸にできる唯一の場ではないでしょうか。我家のお風呂もタイル貼りにして薪で沸かしていた時代もありました。

浴室、流し台、洗面台、壁面などに使われていたタイル貼り主流だった昭和時代がだんだん遠くなり、昭和生まれの私にでさえ懐かしい昭和時代になってしまいました。
そのタイル貼りの浴室だった部屋で花をいけられるなんて幸運な巡り合わせでした。

モザイクタイルが全面見えるようにと先ずクリアカップを配置し、切り込みの入った蓋の中央にストローをさすように花を挿し入れていると、足の裏がぬるぬるし出し花よりもシャワーかなとも思いました。

花と水は由々しき関係にあります。
切り花として花瓶に挿された花は水がいのり、水は花のいのちを守るために精一杯そのお役に立とうと花瓶の中の小さな世界で阿吽の呼吸を保っています。

花材:カーネーション シャクヤク スターチス スイバ
器:クリアカップ