皐月 2022

いつごろカラスノエンドウという名前を知ったのか全く記憶にないのですが、おそらく誰かと歩いていて一緒にいた方がよく識っていたことで、関心を持ったのだと思います。
事程左様に野に咲く花は何となくいつの間にか記憶に刻まれてしまうようです。家の近くで空き地巡りをしてみるとあるある、野草の生えている処なら大抵見つけることができます。
もこもこと茂った葉とともに紅紫色で蝶形の小さな花がちらちらと虫でも止まっているかのように咲いている様子が目を魅くからです。か細い茎を切るには専用にしている文具用の鋏が持ち歩くにも軽くて好都合、この器に生けてみようと家に待たせてある花生けの分だけ、野の主に断っていただきます。分枝した茎の先が巻き毛になっているため、絡まりやすいので無理にほぐさず、もだかった糸玉のようにそのまま器におさめてみました。
まるで五月の風の仕業のように案ずるより産むが易しの結果となりました。

 

花材:烏野豌豆(カラスのエンドウ) 春紫苑(ハルジオン) 姫酸葉(ヒメスイバ)
花器:吉川正道白磁線紋
花台:竹材で編んだ座面の凹んだ古い椅子