如月 2022

春の始まりと云われている立春の2月4日に水仙をいけられたことは、撮影をお願いしているニックさんのスケジュール上の都合でうれしい偶然です。とは言え例年にない厳しい寒さのなかで咲いている自生の水仙を目にしたときは雪中、春玉と云われる所以に見入ってしまいました。

水仙の株元を包んでいる白くて薄い膜を袴と教わりました。いけ方によってはいったん袴を外して再び花と葉をくみなおして袴に戻すこともあるから。この外し方にもコツがあります。
ある時つらつらといけばなの古書に目を通していますと、袴の部分をやさしくとは書かれていませんでしたが、程ほどにやさしく揉み中心の花茎を抜き内側の葉から抜き取ると袴を無傷に外すことができる云々を発見して、何事にも手順の必然性を思い識らされたものでした。

この発見以降、ワインのコルクを抜くコツも掴みコルク外しはお得意なのですが生憎機会がなくて残念です。

大晦日に友人の家で合鹿椀に盛った雑煮をご馳走になりました。手応えの厚みに花もいけてみたい衝動に駆られてしまいました。
その合鹿椀を今回のために別の方が提供してくださいました。
どんな花もそれなりに似合いそうな大らかで安定感のある器に水仙が選ばれたというわけです。

花材:水仙、碇草(いかりそう)の葉、日陰葛(ひかげのかずら)
器:角偉三郎
展示場所:彗星倶楽部(金沢)