霜月 2021

真っ直ぐな菊ではなくクセのある菊もいけてみたいと常々思っていたところ、願えば叶うもので、友人が花芽を分けてくれました。
土にさし芽をして2年目、ウワっと驚く、か細い茎ながらも他の草々をクッションにしていつの間にか育っていたからです。雪の下敷きになる前、自然のなりわいに答えて咲く花々に敬意を表して鋏を入れました。
取り合わせのお相手をあれこれ思い描いているところへ郁子(ムベ)を切らせて下さる方がおられ、菊と郁子が同時期に別々の場所で息づいているというだけで合わないはずはないと今回のいけばなになった次第です。久しくいけることも目にする機会もなかった郁子の果実は「白くて甘く、昔その果実をわらかごに入れて朝廷に献上した」と書物で識り(牧野植物図鑑)、滋賀県では皇室への献上品として栽培に取り組んでいると滋賀県に住んでいたことのある友人が話してくれました。

花材:郁子、嵯峨菊、小菊、吾亦紅
花材を集めた場所:石引の庭、帆斗里の庭ほか
器:ラオス製の古い衣装かご
展示場所:金沢市東山 ロコロコヒガシ204