葉月 2021

去る7月30日から8月1日まで彗星倶楽部企画の「く・ん・じょう」という展覧会に制作チームの一人として開催日前3日間、藩政時代以来の薬問屋石黒ビルヂングの地下室にて掃除と制作に汗を流していました。
大正15年に施行された4階建石黒ビルは昭和、平成、令和にわたって街の、社会の、うねりと共に今なお確かに息づいていることを開催期間中来場者の多くの方々と時間の流れを共有して実感しました。
地下室のうち1室は三方が壁に備え付けの薬棚、床は白いタイル貼り、数十年来時間が止まったままの空間に旬中の旬とも云える葛、枇杷、木槿等薬効のある植物、他の2室にはあらかじめ乾燥させた最も香り高い十薬(どくだみ)、ローズマリー等を持ち込みました。
今回は「いける」という手法から離れて誰もが何処に居ても何がしかの植物を目にするであろう植栽を含めた自生の植物に心を開いてみました。
「良薬口に苦し」、薬草も煎じ煮詰めていただくと強張った身体をほぐし樹液は傷口をいたわり、うーん、いい香りと鼻孔が開くだけで心のわだかまりやしこりが和らぎ同じ地上に在りながら物言わぬ植物からのメッセージは大きく豊かであることを再認識する制作でした。

盛夏の植物:クズ、ビワ、ホウ、サンキライ、ナルコユリ、ヤブミョウガ、ツメクサ、ミント、ローリエ、ムクゲ、アオモミジ、ブドウ、ユーカリ
乾燥させた植物:ジュウヤク(ドクダミ)、ローズマリー、ローリエ、フジバカマ、スギ、チャボヒバ、タイム、ラベンダー、シソ、ジャーマンカモミール
場所(器):石黒ビルヂング地下室 

※写真は「く・ん・じょう」全体の一光景です。