新春 2019

すっかり乾いた稲藁の整地をしたり束ねたりしていると、掌がつるつるしだし、その手を擦り合わせていると、身体の中を支配していた煙のようなものがスーッと抜け、祖父が倒れたあの時のことが彷彿とする。
低いベッドのような分厚い藁布団が用意されると、祖母はこれを寝床にすると床擦れを防げるからと言って、祖父が杖を支えに散歩に出ている間窓辺にたてかけ風通しをしていたのは1950年代の初め頃、小学生にして衝撃的な藁との出会いだった。

真新しい竹筒に立てられたこの稲藁は或る日人から人へと手渡しで私の手元に届く。去年の神無月(10月)にコラム欄であげていただいた、稲穂のいけばなと一対のものです。稲穂は脱穀されると食卓で光を浴びるがそれを支える葉と茎は忘れられがちです。こうやってお正月の花として、今度は花によって崇められる稲藁の存在の大きさと価値をいまいちど見直したい。

花材:稲藁(エコファーム奥野)、大王松、葉牡丹、菊、万両、金柑
器:青竹、寸筒(ずんどう)切
掛物:ドローイング-綯う-(道念邦子)

花材:稲藁(エコファーム奥野)、大王松、葉牡丹、菊、万両、金柑

花材:稲藁(エコファーム奥野)、大王松、葉牡丹、菊、万両、金柑

花材:稲藁(エコファーム奥野)、大王松、葉牡丹、菊、万両、金柑