• 上 陽子<br />「我谷盆 木に問い、尋ねる」

     
    「我谷盆」は石川県加賀市の山間(やまあい)、大聖寺川の川筋にあった旧我谷村で彫られていました。村には木端葺き屋根の材料を作る職人が多く住んでおり、雪に閉ざされる長い冬のあいだ、余った端材をつかって彫られたのが、その始まりではないかと言われています。
     
    わたくしは木工家・森口信一氏のもとで我谷盆を学び、旧我谷村の山の文化と歴史を大切に、楔を使って丸太を割り、板を作り、彫っています。それはけっして効率良い方法ではありませんが、自分の手で丸太を割り板にすることで、その木のもつ性質を知ることができ、どんな姿に生まれ変わりたいのか、木に問い、木に尋ねる時間にもなっています。
     
    お盆は什器のなかではあくまで脇役です。主役をたて、働く。そんな働きものの我谷盆を彫っていきたいと思います。

     

    上 陽子(カミヨウコ)

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      石川県金沢市生まれ。
      2016年に木工家・森口信一氏の我谷盆ワークショップに参加し、我谷盆復興に情熱を傾ける姿に感銘を受ける。翌2017年春から氏の主宰する風谷アトリエ木工塾で本格的に我谷盆を学び現在に至る。我谷盆を後世に伝える「風谷ブランドの我谷盆」に参加中。