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「我谷盆」は石川県加賀市の山間(やまあい)、大聖寺川の川筋にあった旧我谷村で彫られていました。村には木端葺き屋根の材料を作る職人が多く住んでおり、雪に閉ざされる長い冬のあいだ、余った端材をつかって彫られたのが、その始まりではないかと言われています。
わたくしは木工家・森口信一氏のもとで我谷盆を学び、旧我谷村の山の文化と歴史を大切に、楔を使って丸太を割り、板を作り、彫っています。それはけっして効率良い方法ではありませんが、自分の手で丸太を割り板にすることで、その木のもつ性質を知ることができ、どんな姿に生まれ変わりたいのか、木に問い、木に尋ねる時間にもなっています。
お盆は什器のなかではあくまで脇役です。主役をたて、働く。そんな働きものの我谷盆を彫っていきたいと思います。上 陽子(カミヨウコ)