-
茶道文化とともに育まれてきた京指物の技。木目の自然な美しさを活かしながら美しく格調高い調度品に仕上げるためには、漆や金箔など加飾の厚み、温度湿度、経年変化なども考慮に入れた緻密な設計と、繊細で高度な技術と感覚、経験を要します。指物師となり50年の佐々木公夫さんの作る京指物は、優美で洗練された輪郭を持ちながら柔和で穏やかな雰囲気を備え、眺めるほどに心が落ち着きます。
印象的だったのは「材を見れば映像が浮かんでくる」、また「伝統を守ってるだけやったらだめ、絶えず新しいことをやっていかんと」という佐々木さんの言葉です。長い歴史を潜り抜け一つの役目を終えた古材の佇まいはそれだけで十分に味わい深く個性的ですが、その材自身がどう生かされたいのかを感じとるのは職人の感性によるもの。時代や暮らし方の変化に合わせて創意工夫を重ねながら、古材に新たないのちを吹き込む仕事の難しさ面白さを楽しみ、熟練の手技と感性で日々美しい京指物を作り続けています。京指物師 佐々木公夫