「しみじみと良い家だと感じる家」を設計して欲しいという依頼

稲村ガ崎の家(神奈川県鎌倉市)

小満・紅花栄

家づくりにおいて抽象的な要望は、具体的な要望と違って人によって感じ方が異なるため、正解がなく、大変難しいものです。

それでも、それは私が常々考えていることに近い内容だったので嬉しく思いました。
例えば「洗練された普通の家」「飽きのこない家」「街並みに調和する家」といったことです。

さて「しみじみ」と感じるとはどういうことでしょうか。
広辞苑には「深く心にしみるさま」「つくづく」「静かに落ち着いているさま」とあります。

私は以下の条件を満たすことが大切なのではないかと考えました。
・長い時間に耐えうるもの(デザイン・使い勝手)
・多くの方が共感できるもの(かっこつけない・普通)
・ほっとする気持ちを感じられるもの
どうってことのない、当たり前のことなのです。

さて、そのような家を設計できたかどうか、今はまだ分かりません。
5年後、10年後にふとその要望を思い出して、「本当にいい家になった」と感じてもらえたとき、答え合わせができると思います。私ではなく建築主にとって。

 

稲村ガ崎の家(神奈川県鎌倉市)
設計:木下治仁建築設計事務所
撮影:米谷享