均衡

山の風景から

三重県鈴鹿山系

5月、標高1,000mそこそこの三重県鈴鹿山系を歩いてきました。山歩きをしていると足元を確かめるために地面を見ることが多く、土のようすが気になります。湿ったものや乾いたもの、黒かったり赤かったり、びっしりと地被類に覆われていたり、大小の根に絡まれていたり。このような低山では植物との関係が密接で、いずれも一定の均衡がとれてその風景を保っていることが想像できます。

竜ヶ岳

こちらは1,099mの竜ヶ岳。竜の背中のようにゆったりとカーブする稜線が特徴的です。竜の字のつく山は雨乞の対象であることが多く、この日もガスが立ち込めていました。風の吹き通るこの山には背の高い木は育たず、草原状となり山肌のようすがはっきりと判ります。ここでしか育たない植生のもので均衡を保っています。

藤原岳

こちらは、1,009mの藤原岳。石灰岩がごろごろと露出し、その隙間に高山植物がしっかりと生育しています。また、鈴鹿山系は近江と伊勢とを往来する古道や峠が多く、自然と人との関わりあいの痕跡があちこちにみられるエリアです。人の手の入ったものも含め、さまざまなものがある均衡を保って美しい風景をつくっています。
建築の外構を考えるとき、今までの庭の概念にとらわれることなく、おおらかで美しい均衡をもった外構計画ができないか漠然と考えているところです。