曲線

知育玩具用のキャラクターづくりに取り組んでいる。
普段は直線ばかりの図面を描いているから、いざ曲線をCAD上で使おうとするととても苦労する。
建築図面で使用する曲線といえばもっぱら円弧だ。なぜ円弧かといえば、実際に施工する際の生産性の良さが1番の理由だろう。2番目の理由は見た目のストレスの少なさではないか。円弧は簡潔で、方向性もなく、宇宙を包含するような完璧な形態である。

○,△,□ はあらゆる形態の大元だが、真円,正三角形,正方形とも人の眼には歪んで見えている。原因は両眼で見ているせいである。写真は一つ目だから歪まない。
左官職人が感覚だけで丸窓を塗り上げると他人が見てもそれは真円として把握される。しかし、実際に測ってみると上下・左右の寸法は違っている。
つまり、人はみな無意識に錯覚補正していることになる。

CADには楕円を描くコマンドはあるが、卵形を一発で描くことはできない。
曲線を連続させるには曲線を描くコマンドを駆使して曲線をつないでゆく。数あるコマンドたちを使いこなせるようになるまでにはずいぶん苦労した。
以前、詳細図で波形スレートの断面を描くだけで大変な思いをしたくらいだ。
自由曲線で描いた手描きのスケッチをCADでデジタル化するのはただ事ではない。スケッチは既に直感的に錯覚補正されている。それを幾何学的な曲線をつくり出すコマンドを使って見た目に不自然でない形に整えるには、手描きでは無意識にやっていた補正を、こんどは意識的にやらなければならない。
何度もなんども微調整しながら仕上げていくプロセスには苦労もするが、納得のゆく形態にまとまったときには大いなる達成感が得られる。

「曲線」なんでも来い!という心境に・・・やっとなりました。