大草原の小さな家

「大草原の小さな家」というTVドラマが流行っていた頃、依頼主から「〝大草原の小さな家〟みたいなお家にしてください」・・・??

これには少々いきさつが・・

ぼくの設計した小さな家に、おなじ町の親類のおばあちゃんが小用でやってきた。
用を済ませて家に戻ったおばあちゃんは「○○さんが面白い家を建てたよ!」。それを聞いた家族が総出で〝小さな家〟を観に来た。みんな気に入って・・・
・・・別荘の設計を依頼されることとなった。
みんなが気に入った小さな家は、居間と兼用の食堂が板土間になっていて玄関がない。家に入ればそこはすでに囲炉裏端、そんな感じだ。予算がなくて玄関もつくれなかったのだ。そのせいで〝別荘風〟に見えたのかな?。

「あのままでいいから別荘を建ててください」_これが依頼主の最初の言葉だった。大草原の小さな家みたいなお家、はこのときのたった一つの要望だったのだ。
現地をみれば案の定、そこは山の中。
・・・困ったことになった。そこは大草原どころか全体が急斜面。基礎工事は大変だし、おまけに落ち葉対策で樋も付けられないから、足場だって大げさになる。予算も限られているし・・・どうやって大草原の・・・
結果として「大草原の小さな家」は「急斜面の小さな家」として実現することとなった。
玄関がないのは動線上の〝内と外〟をなくすのが目的で、予算上のつごうではない。

家族で別荘風の小さな家を観に来たとき、〝大草原〟がどこかに飛んで「小さな家」だけがインプットされてしまったのかも知れない。そうであれば〝急斜面〟の「小さな家」でもつじつまが合う。
そういえば「大草原の・・」に玄関はなかった。だから別荘風?

いずれにしろ、人が抱く印象とかイメージって面白いですね~・・・

 

 

撮影:岡本茂男