イマジネーション

以前、幾何学模様のレースのカーテンを見ると高層ビルの壁面に見えた。
近ごろはQRコードの模様が建築物や造形物に見える。
イメージとは不思議なもので、逆の現れ方もある。
高層ビルを見て自宅のカーテンを思い浮かべる人だっているだろう。
複雑に刈り込まれた西洋の庭園だってQRコードそっくりだ。
囲碁の盤面しかり。QRコードの模様でしゃれこうべを思い浮かべる人もいる。

子供のころ、ウサギが月で餅つきをしていると言われてもぴんとこなかった。
その情景がイメージできなかったのである。
どう説明されても白兎に見えなかったし、耳だけを見て兎と判断したくないし・・逆さまだし。まして、真ん中がくびれた上下のない丸太ん棒が杵だといわれても、デッカい木槌のような杵しか見たことないから納得のしようもない。
星座だって、大熊だ小熊だと云われても、逆立ちしたってイメージできない。
天の川の場合は川そのものでしかないから、これはイメージとは違う。

QRコードの模様を建築の平面図としてイメージすると想像力をかき立てられる。
黒い部分を建物に見立てれば、白い部分は街路や庭、白がまとまったところは広場に見える。絵的にいえば俯瞰図とか鳥瞰図ということになるだろう。
都市的スケールでイメージすれば城壁で囲まれた中世の都市だ。その気になれば、広場に人や馬車がうごめいている様子まで見えてくる。奥の方の塊は教会か。尖塔が立上り、都市を象徴して、城壁の中だけでなく場外に対してもその存在感を見せつける。
全体をカテドラルの平面図に見立てれば、白黒のパターンは床の大理石だろうか。
中に入って見上げれば、高窓に嵌められたステンドグラスから天空の光が降りそそぐ。ひざまずいて祈りを捧げるのは巡礼の人々か。
住宅の平面図としてみるなら多種多様の家々に変身させられる。
白黒のパターンを加工して、パティオのある家だろうが、吹抜のある大屋根の家だろうが、ピロティや広いウッドデッキのある家であろうが、いかようにも見立てることができる。
東西南北を設定して日射しの強さや明暗を想定する。それを前提として人の集まる場所、老人の居場所、ひとり静かに過ごす場所などを想像してみる。自分が住むならこうだ。あの人たちが済むならこんな風かも。などなど・・

入道雲がゴジラに見えたりドングリをかじるリスに見えたりするのと、QRコードから家や都市を想像するのとは、基本的になんら変わりはない。

設計もデザインも、原点は ”妄想” なのかも・・・

QRコード