学びの原点

高校の建築科を卒業後、設計事務所で三年間お世話になった。
日本コカコーラや出版社の本社屋、最高裁判所のコンペの図面などを末席で描かせていただいた。そんな経験も含めて、在籍中に建築に対する基本姿勢を身につけることができた。

学びへの意欲を抑えきれず、退所後に一浪して芸術学部の美術学科に入学し、デザインを学んだ。教授にはバウハウス(ドイツの美術学校)で学んだ数少ない日本人のひとりである山脇巌先生がいらして、その弟子の講師の方々からバウハウス理論にもとづくデザインの基礎をみっちり仕込まれた。
平面や立体の理論を学び、次々と出される「構成」の課題にうんざりしつつも喜々としてこなした。この頃、デザインの奥深さや基礎の大切さを理解できたような気がする。
頭をつかう課題にはずいぶんと悩まされたが、デザインとはこんなにやっかいなものかと思ったものだ。おかげで「構成」が建築の設計そのものだという実感も得ることができた。

立体構成では、メビウスの輪を立体にできないかと考えるうち、ふとアイデアが生まれた。あわてて粘土をいじくってみると可能性がありそうだと気づく。手近の屑カゴに石膏を流し込んで塊をつくり、削っていったらおもしろい立体が現れたという次第。

立体メビウス

美術学科のショーケースに収められた立体メビウスを、遠くからながめては一人ほくそ笑んだのを覚えている。卒業後、何年間か展示してあったのも、うれしい想い出の一つだ。
山脇先生には卒論もみていただいた。モノとモノとの関係を磁場に見立てて解釈するこの論文で、空間のバランスの取り方のコツをつかめたような気がした。今でもその時の成果を活用している。

何事も「原点」が大事だということを、つくづく感じる今日このごろである。