明治から昭和にかけて活躍した、日本を代表する彫刻家 朝倉文夫の記念館。
海外からの観光客にも人気な「谷中」にあり、ご存じの方も多いと思います。
1907年に小さなアトリエと住居を構え、その後増改築や建て替えなどを経て1935年に完成した建物です。
面白いのは、彫刻家が自ら設計をしたという点にあり、細部にわたって意志が感じられるところにあります。
特にアトリエ棟は、当時はとても貴重だったと思われる7mを超える電動昇降台を設けるためにコンクリート造にしています。
自然光の中での制作を重要視し、北側には大きなハイサイドライトを設け、影ができないようにという配慮から内部のコーナーを局面仕上げにしています。
外部も局面デザインを多用し、しかも型枠の表情がそのまま表現されるようにコンクリートの打放しと、当時としてはかなり大胆な造り方をしています。
ユニークなところがもう一つ、この建物には屋上庭園が造られています。
自然と親しみ植物を観察することは、五感をとりわけ視覚を鍛えることに役立つという思想から菜園がつくられています。
アトリエに通う塾生に対して、実体験を通して彫刻という行為に向き合ってもらいたいという思いだったのではないでしょうか。
中庭や純和風の住居棟など館内の撮影が禁止のため、写真でお伝え出来ないのが残念です。
生涯にわたり、多くの猫の作品を作っています。
猫の神秘性などに魅力を感じ、多い時には15~6匹の猫を飼っていたといいます。