住まいの源流

進化論のダーウィンはミミズの生態を16年間観察しつづけ、その特性をやっと把握すことができた。伝統工法は、縄文時代から連綿と進化しながら現在に至っている。そのことを我々も充分に理解し、把握しておかなければならない。

日本の伝統工法は優れた寸法体系をもっている。「立って半畳、寝て一畳」といわれるように、畳の大きさが日本の寸法の原点だ。おかげで日本中の人々が大きさと面積の単位を共有することが可能となり、たとえ畳がなくとも8畳の寝室とか、16畳のリビングといった、言葉のやりとりだけで部屋の広さをイメージすることができる。日本人だけがもっている広さを表す寸法体系であり、世界に誇るべき伝統である。
さらに、畳から発展した新たな単位が生まれる。畳二枚で一坪と呼ばれる面積単位だ。300坪が一反で畑一枚分、十反で田んぼ一枚分。各段階ごとの単位が見事なまでに言葉で云い表されている。しかもわかりやすい。かつての家・屋敷が300坪を基本としているのは、畑一枚分ということでもある。

身体寸法である畳の大きさを数字で表したのが「一間」であり「六尺」である。日本人はこれを縦にも横にも当てはめることによって、あらゆる建築を創造してきた。畳の大きさは障子や襖の大きさでもある。素人でも家の間取りや壁面を思い描けるのは、このことに起因している。
流通する面材は、畳の大きさから三六(サブロク)であったり、一回り大きな四八(シハチ)だったりする。1尺と1フィートはわずか1.8ミリしか違わない。したがって四八は4x8フィートでもある。ちなみに欧米の建築グリッドの単位は4フィートで、面積表現はスクウェア・フィートのみ。

日本では部屋の一辺が一間、一間半、二間と定められているため、全ての部屋を畳の枚数で表すことができる。日本建築のグリッド単位は「畳」ということだ。
構造的には、スパンが変化しても梁巾は柱の寸法に合わせて固定されている。梁成は半間ごとに一定の寸法でアップしていく。このことだけをみても、日本の木構造は完成されたシステムであることがよくわかる。
一間スパンの梁断面はそのまま柱の断面であり、梁成は畳一枚分とばしで柱と同寸の頭つなぎ。畳一枚半とばしで七寸梁、二枚とばしで八寸梁という具合に断面が一寸ずつ大きくなってゆく。美しいほどの寸法体系である。
材木の長さは10尺、12尺、13尺2寸と比較的自由で、柔軟な選択肢が与えられている。だからこそ、棟梁の頭の中に複雑な木造建築をすんなりと納めることができるのだ。

すでにシステム化されている伝統工法を現代の住宅に活かすには、設計から施工まで一貫してシステム化する必要がある。
既存の数奇屋造りや茶室、神社仏閣など、それぞれがシステム化されていて、規矩術などを使って細部までスムーズに造り上げることができる。だからこそ、現代住宅の生産現場にもそれが必要と考える。
自由度の高いプランニングと、個々の注文や変更にスムーズに対応でき、たとえ現場で変更があってもすみやかに応じることが出来る。そんな生産システムを木造住宅に採り入れたい。

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