無計画な炭酸ガス排出の結果、地球温暖化による気候変動に右往左往する現代人。それとは正反対の環境である地球寒冷化を生きぬいた石器時代人は、暖を採るために洞窟に住んでいた。
洞窟の生活では酸素を吸収するための呼吸や酸素を消費する火をつかうため、洞窟の空気はよくなかったはずだ。炭鉱やトンネル工事では酸欠を予知するために、センサーとして敏感なカナリアを連れて行く。カナリアが騒いだり倒れたりしたら、あわてて外に出て難をのがれる地球人。かわいそうなカナリア・・・にぶい人間たち・・石器時代人もきっと洞窟でカナリアを飼っていただろうと妄想する。
地球が暖かくなると人間たちは外に出て窓のある家を建てた。酸欠のセンサーだったカナリアは、美しい歌声をきかせる鳥として人々を和ませることになった。勝手な人間たち・・・
石造文化では壁に穴を開けて通気や採光のための窓をつくった。開口部という呼び名はここからきているように思う。
木造文化でもログハウスや正倉院のように材木を積み重ねるつくりでは窓を空けるのに苦労しただろうが、柱・梁の組合せでつくる木造建築では骨組のあいだをいかに塞ぐかという別の苦労があった。
骨組の間に入れた小骨をたよりに土を塗ったり、間に板を嵌め込んだりして壁をつくり、そこにあらためて開口部をつくった。壁でふさがない部分には建具を入れて開け閉てした。
ガラスのおかげで透明な壁や透明な窓をつくることができる現代では、通気や明かり採りのための小窓もガラス窓だ。
小窓も遠くにあればどうということもないが、飾り棚や机の前など、身近な存在になるとアルミの枠や網戸が気になってくる。夜ともなればガラスは黒くなり、そこだけが陰気でイヤな感じになる。
アルミの部材や網戸は近寄れば寄るほど見苦しい。それを消して美しく見せるには障子で隠すのが手っとり早い。夜の黒いガラスも白鳥のごとく変身してくれる。しかし風を通すには障子を動かさなければならないし、動かせばまた黒いガラスや醜いアルミが顔を出す。
あるときハタと気がついた。障子そのものを風が通るように加工してやれば、閉めたままでも風は通る。「通気障子」の発明だ。
横軸回転のサッシを雨が入らない程度に透かしておき、その手前に上下にスリットを設けた小障子をセットする。
昼夜を問わず、四六時中うつくしい障子を風が抜けてゆく・・・
撮影者:不明