洗濯物は陽当たりのいいところに干したい。
風通しのいいところに干したい。
部屋から見えないところに干したい。
他人の目に入らないところに干したい。それらは誰しも希望するところだ。
フランスでは洗濯物は地下室に干すと聞いたことがある。見られたくない?
地中海のどこだったか。道路を隔てた家の窓からまどへロープを渡し、滑車を使って空中に洗濯物を干している。そんな映像を見たことがあると思うが、まるで運動会の万国旗のような楽しい光景だ。向かいの家の似たようなパンツを、誤って取り込んでしまうことだってありそうだ。
仲がよくない場合はどうするのだろう?
晴れた休日の団地の景色は満艦飾のごとき布団干しのオンパレードとなる。
工高の建築の先生が「バルコニーに布団を干されても負けない建築」という話をされていた。家の外観をデザインするときこの言葉を想い出すが、戸建ての住宅となるとそうもいかない。
物干場は目立たないところにあって陽当たりが良くて風通しが良くて人目につかないところ。これが理想なのはよく分かる。
陽に当てたいのは紫外線での殺菌消毒効果を期待してのことだろうし、ふっかふかのほんのり温かい布団なんかも想像しているのだろう。たとえ部屋干しでも、最後は外で紫外線に当ててから取り込みたいというのが、だれもが望むところだと思う。
地域によっては、めったに晴れない冬場はもっぱら部屋干しというところもある。そういう生活に慣れてしまうと部屋干しがあたりまえになるのかもしれない。冬場でなくとも、陽が入るサンルームならば陽に干す実感ももてるし、なにより外出しても雨の心配をしなくて済む。
風は入るが雨の吹き込みは防いでくれるジャロジー窓ならサンルームでも風が通るが、ガラスのせいで紫外線は減る。
家の北側は陽当たりはわるいが風は通るし人目にもふれにくい。ところが家が平屋だと、北側にも陽が当たるから物干場を難なくつくることが出来る。
この家の北側は隣地の竹林で人目に触れることがないので、陽当たりと風通しのみ確保できれば良かった。竹林は借景でもあるので、それを楽しむデッキも設けてある。そのせいで、北の干場はデッキからの見栄えも気にしてデザインしている。
ご主人は竹林の音を聞きながらデッキで一杯を楽しんでいるのでそこは「北酒場」。そのついでに北の物干場を「北干場」と呼んでみた。
撮影者:不明