屏風

屏風(びょうぶ)や衝立(ついたて)は、建具の一種と考えると分かりやすい。しかも場所を選ばず移動できる建具である。
建具一枚では自立できないから倒れ止めの足をはかせる。それが衝立。二枚をつないでL字に曲げれば屏風になり、枚数をふやせば曲がりも増えて大きな屏風にもなる。
茶室で使う「風呂先屏風」は背が低くてかわいらしい。目隠し? それとも風除けか?。
「枕屏風」は元々は枕元の風除けだが、押入のない長屋の布団隠しとして使われる方が効果的かつ見栄えがする。この使い方が気に入っているが、隠れていた布団を敷いて寝るときには、おそらく枕元の風除けとして使われたのだろうと推測する。

写真の家は、若夫婦が新婚生活を送るためにとりあえず建てられたた別荘みたいな家。生活空間はワンルームで、家そのものも小さい。
郊外ではあるが、庭らしい庭がとれないし地上には景色もない。1階はポーチと土間と倉庫、2階がメインの生活空間となっている。
ワンルームは立体的で、土間から一段上がったところが造付けの本棚があるホール。書斎のような使い方を想定している。そこからまた上がると畳敷きの茶の間、その奥が寝室とという具合に、天井とともに全体を見わたせる。
スキップする床と、閉じられた水回りの壁面や造付け収納が、部屋側に膨らんだり凹んだりしてワンルーム空間を縦にも横にも立体化している。

夫婦二人きりのワンルームにも、仕切りや目隠しが必要なときがある。客がきたとき、あるいは着替えの時などだ。
仕切ったり隠したりするには引戸を利用するのが一般的だが、小さなスペースでは開いているときの鴨居の存在すら邪魔なこともある。目隠しが主な目的であれば目の高さまであれば十分で、低ければその上の視界を拡げてワンルーム空間を強調することができる。
低めの目隠しを開けしめしやすいように、引戸と扉を合わせたような動きでなおかつ、プレーンになりすぎないような仕掛を考えていたら屏風にたどり着いた。

屏風は折りたたんで移動したり隠したりも出来るが、以外と運びにくい。この家ではその必要もなく開けしめさえ出来ればいいので、本体に車をつけ、両端を丁番で柱に固定して簡易に開けしめ出来るようにしている。丁番は「抜き差し丁番」にして、柱から簡単にはずせる。

30才直前に設計した「良くできたプロトタイプ」なのだが、応用するには形がはっきりしすぎている。そこが残念といえば残念・・・

 

タツベイ邸:外観_1

タツベイ邸:内部_2

タツベイ邸:解説_3

 

撮影:岡本茂男