障子のデザイン

そのむかし、あずま障子という、障子まがいのガラス戸があった。
あずま(東)障子というくらいだから東京近辺で流行ったものかも知れないが、知らない人が多いと思うので簡単に説明しよう。
「東障子」は曇りガラスのガラス戸に障子の組子をはめ込んだエセ障子。ツーインワンのような建具だが、合理的なつくりの建具といえば言えなくもない。
まだガラスのない時代には、採光と目隠しは障子だった。その頃の名残だろうか、東障子は外が見えなくてもかまわないところに使われていた。アルミサッシがまだない時代だから建具はすべて木製。そのせいで組子を足しただけで障子っぽくなるガラス戸が流行ったのかも知れない。この例からしても、障子のデザインは組子がすべてと言ってもよさそうだ。

日本人は障子の組子が好きなのだと思う。そうでなければ、採光充分で向こうの見えない曇りガラスだけで、機能的にはなんの問題もないはず。それに満足せず、ガラスの手前に白木の組子を入れたがる日本人がいる。なぜ組子にこだわるのだろう。
ひとは細部の装飾を好む。身の回りのものや身に付けるものを飾りたくなる気持ちもよくわかる。障子の場合、障子紙に着物の柄みたいな模様を入れたらうるさくてたまらない。だから賑やかにならないように、組子部分ををアレンジして静かな装飾を楽しむ。

障子には表と裏があり、とうぜんながら表情が豊かな組子側が表。部屋と廊下の境なら裏表はハッキリするが、部屋とへやの境の場合は、たとえば茶の間と予備室だったら茶の間側が表となる。
では、茶の間と客間だったらどうだろう。ここは考え方の問題。日常生活と、たまの客とどちらを重視するかだ。
吹き抜けと上の部屋との境では、下がたとえば茶の間だったら茶の間を表にしたい。

組子にもデザイン上の制約はもちろんある。元は高価な和紙を、破れない範囲でかつ無駄なく使えるように組子のピッチを調整した。和紙のプロポーションは1:√2だから、和紙4分の1に割り付けた組子のプロポーションも、和紙に無駄がでないように1:√2。これが生活の知恵、デザインとはそういうものだ。
安定感のある横位置で1:√2の組子、昔はこれが標準だった。
ちょっとしたオシャレでは、わざと不安定さを強調して組子を縦に組んだものや、細かに組んで装飾を強調したものもある。これ見よがしの三角や六角は、手間はかかるし和紙のむだが多くて論外。そもそも派手すぎて住まいの障子には向かない。

現代では強くて大判の障子紙があるので組子のデザインの巾も拡がった。鬼格子と呼ばれる、大きく組んだ組子や横格子のみの障子も可能だ。
紙の強度と組子の強度を推しはかりながら、美しく飽きのこない障子のデザインを追求したい。

仙台
障子組子