骨太の家

建て主の趣味は海釣り。みるからに「大海原で大魚を釣り上げるのが大好き」という感じの方。渓流で小魚なんて、とてもじゃないけど似合うひとではありません。
家に関する注文も細かなことは一切なく、たった一つ「外流し」のみ。
その理由。魚の鱗をバリバリやるとそこら中に飛び散り、家中くさくなってこまるというものでした。軒下の大きな外流しで、鱗や、内蔵や、頭や、尾びれなどをすばやく取り去り、おもむろに台所に運び込むというのです。
そうとなれば、家に土足で入り、長靴のまま台所までたどり着くのが動線の流れとしては自然です。そのせいで1階の半分くらいが板土間になっている。

大魚に出刃包丁を使いこなす豪快な男もじつは独り身。釣った魚をさばいて友人たちと酒盛りをするのが、今の生活の唯一の楽しみ。
家が建ったら結婚して家族と暮らす夢を抱いているが・・・予算はほんのわずか。

コストダウンを図るため、家のつくりは1階の面積と同じ面積のロフトをもつ平屋となった。総二階ならぬ総ロフトだ。ロフト全体の半分にあたる中央部分は普通に歩けるが、その他の部分は天井がしだいに降りてきて腰をかがめることになる。それでも日常生活にさして支障はないと判断し、寝室と納戸、勉強コーナーと二つの子供部屋は確保している。4人家族の想定だ。
骨太の建て主に合わせ、家の内も外もデザインは骨太に。
はじめて訪問する人は「この家にこの人あり」という様子をみて、さぞおどろくことだろう。

設計者として、それなりに楽しませてもらった。

骨太の家

骨太の家

写真:DON工房