電柱

自然公園の脇道に杉の大木が1本 すとーんと立っている。不自然にピンとしていて葉もなければ枝もない。奇妙に思って見上げれば上の方に電線が張られているではないか。電柱?・・・その先にはごく普通のコンクリートの電柱が延々と並んでいる。
杉らしき樹木が電柱であることは間違いないようだが、なぜまた1本だけなのか。
電力会社が自主的に試作品を自前で作ったのか、自治体の「環境保全課」かなにかに言われてしぶしぶ作ったのか、それとも自治体の予算で電力会社が協力して作ったのかわからないがそれにしても幹の表面は色も凹凸も本物そっくり。
初めは白っぽいコンクリートの電柱も、時を経るにつれ味が出てくるとしだいに風景になじんでくる。近ごろは金属製のものもあるが、立ったばかりはとうぜんピッカピカ。それでも古びた送電線の鉄塔のごとく、メッキの表面が変質して鉛色のいい感じになる。
別の機会に山沿いの道で緑に塗った電柱を見かけたが、冬枯れの景色を背景に妙に引き立って?いた。茶色に塗った電柱もあるが周辺の木の幹はグレーっぽいものが多く、なかには白っぽいのもある。さすがの茶色の電柱もなかなか景色に溶け込めず、ぽつぽつと並ぶ茶色の姿がかえって目立っていた。いっそのこと軍用の迷彩色にでもした方がなじむのかも知れない。

防火制限に対応した玄関扉で金属に木目をプリントした製品がある。木目が浮き出した本物のような凹凸がつき、樹種や色も選べる。完全にだまされてシャクにもさわるが、その技術には脱帽する。そうまでして偽物を作らなくてもいいじゃないかとも思うが、本物の板を張った高級品があるところをみると「この辺で我慢するか」という買い手がいる証でもある。
初期のプリント合板はすぐ偽物とわかるひどいものだった。印刷技術が発達し、見ても触れても見破れないものが出てきた後も、こればかりは意地でも使わなかった。
本物の木目がある合板に溝を平行に彫りつけ、いかにも板を張ったように見えるピーリング合板というのもあった。予算がなく、これは”本物”のストライプ模様であると自分に言い聞かせて採用した時期もあったが、いやな思い出であることに変わりはない。いまならピーリング加工を施さないものをそのまま使う。
CG の発達などで何が本物かわからない時代にはなったが、だまされて平気な人が増えていくのが心配です。

本物志向を堅持したい。
 
電柱