工事現場にUFO

大きな建築現場や道路工事では地面にぶ厚い鉄板を敷く。ダンプや重機の重さに耐えるためだ。
住宅の現場にはそんなスペースはない。ダンプや重機も縁がない。だからといってやわな地面を放っておくわけにもいかない。雨でぬかるんだり、資材や運搬車の重みで沈んでしまうおそれもあるからだ。
鉄板は重くて扱いづらい。狭い現場でも取り回ししやすく、かつ軽くて扱いやすい地面の補強パネルが求められる。そんな必要性から、片手で持てるくらいの組み合わせ式プラスチックパネルが開発された。六角形なので、足していけばどの方向にも展開できて荷重も分散されやすい。ジョイント部も多いからつないだ後の面もしっかりする。六角形の利点を活かした目の付け所がいい。
パネルは工事車両の重さに耐えられるよう、強度を上げるためのリブを裏側に設けている。大小の丸や三角のリブで補強されたその後ろ姿はまさに UFO。SF映画にでも出てきそうな、感動するほどの力強い姿だ。しかも隣どうしのパネルが組み合わされるジョイント部もていねいに設計されている。
材料代も型代も節約しなければならないなかで、使用中は人目に触れないパネルの裏側であるにもかかわらず、見た目の格好よさを設計者は無意識のうちに追求したと思われる。
デザインの本質はそこにある。仕事を楽しむというのはこういうことを言うのだろう。
プロダクトデザインのお手本といえる。

戦闘のための道具や、ヨーロッパの古い橋などに美しいものが多いのは、技術者の美的操作がはたらいた結果である。関わった人たちの美的感性が無意識のうちに盛り込まれているのだ。
建築も、生活の道具としての機能をていねいに盛り込み、そのまま素直に形にあらわせば決して見苦しいものにはならない。そこから見直しをくり返してゆけば、美しさは向こうからやってくる。プロセスという流れのなかに、美は確実にひそんでいる。

25足元養生パネル