まちかど建築でタイムスリップ no.8

旧田中家鋳物民俗資料館/枚方市藤坂天神町
建築年:江戸中期

旧田中家鋳物民俗資料館

きれいに整備された門を入ると、登り気味のアプローチの奥に悠々とした大きな瓦屋根。低い軒先、瓦のけらばがとても美しく、おおらかさと繊細さが同居する魅力ある建築です。

旧田中家鋳物民俗資料館

「田中家は、河内鋳物師として代々鋳造業を営む。枚方上之町にあった鋳物工場と主屋の寄贈をうけ、藤阪に移築復元して鋳物民俗資料館として開館。」(枚方市HPより)。
建物中央にはタタラと呼ばれる溶鉱炉。「千と千尋」にでてくるシーンを思い出します。建物内部はかなりの高温。タタラ上部には大きな開口が屋根を貫いており、壁面には特徴的なガラリ開口がリズミカルに設けてあります。上下にあるのは大量の空気を得る為でしょうか。火を使うため屋根は瓦葺。屋根下地は竹に土をのせ平と丸を組み合わせた本瓦葺きとなっています。よく見ると瓦の間から光が漏れるほど所々に隙間を設けてあり、よほど通風に工夫をこらした建物であることがうかがえます。

旧田中家鋳物民俗資料館

半間毎の柱が一定のリズムをつくりそこに3通りくらいの開口がその機能に応じて設けられているようです。そのプロポーションが美しくのびのびとしてみえます。江戸中期ですが、隣接する主屋とあわせ当時としてもかなりの費用をかけて造られたものと思われます。高度な技術を使って製造された鋳物工場。現在で言えば先端技術メーカーのハイテク工場でしょうか。民家のようなおおらかさの中にも繊細さを感じるのは、そのためかもしれません。