広島県 人を生かし、風土を生かす家づくり 雑誌「チルチンびと」66号掲載
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デザインを成立させる大工の技術と心意気  連合設計社の越野さんは「モデルハウスの棟梁・樫本隆弘さんは、考えてやってるなあと感心しました。難しい納まりも、考えて答えを出してから聞いてくる。こちらは、納得してうなずくばかりでした」と話す。  樫本さんは、53歳。16歳から坂田工務店で修業を積んできた、同社の中心的棟梁だ。 「いやあ、町内で生まれたんで、訓練校に1年間行って、町内の工務店に入っただけです」と照れながら話す樫本さん。しかし、仕事の話になると目の色が変わった。 「私の仕事は、図面から設計者の思いを読み取ることです。連合設計社さんは、シンプルに仕上げたいんだなと、感じました」と樫本さん。仕上げの細かな部分については、連合設計社の仙道さんと、電話やメールで打ち合わせを重ねたという。 「天井の化粧垂木を釘を見せずにきれいに納めたかったので、屋根を先にかけてから垂木に天井板を打ち上げ、棟木にホゾを刻み、最後に化粧垂木を仕上げました。それから、普通の仕事だと壁と天井の見切りに回り縁を付けますが、シンプルに仕上げるために今回は付けていません。左官屋さんも大変だったと思いますが、難しくてもできんことはないと、お互い自信はありました。とにかく、経験から培った常識をゼロにして挑みました」 宮大工のす醍醐味は、鑿  樫本さんと話す刻み場で、黙々と蛙股を彫っていたのは、安宗義幸棟梁、62歳だ。同社の事務所には、八幡神用の流れ造りの社が陳列してある。その彫り物は、すべて安宗さんの仕事だ。安宗さんは、三次市の宮大工の下で9年修業し、坂田工務店には平成4年に入社した。 「宮大工になったのは、曲線と彫り物がおもしろいなあと思ったんだな」

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