店に溢れる不思議な宝箱のような店が、温かく人を包み込む「カンテラ」

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人通りもそう多くはない前橋市内の大通りから一歩入るとふと目を引く店がある。扉を開けると一気に「カンテラ」ワールドに包まれる。

青と緑と白の入り混じった印象派の絵画みたいな壁を背景に、使い込まれた家具やマッチ箱に可愛くおさまったメニュー。

小さなギャラリーのように集められたスノードームのコレクション。

懐かしさを感じる本棚やチロチロ燃えるストーブ。

そして、お店の暖かさと愛らしさに重要な一役を担っているのが、いつもストーブの横でうたた寝しているオーナーの相棒、パンダウサギのあくび。

どれも何気なく置かれているのに居心地良さそうに収まっていて、どの場所を切り取っても絵になる。細部にまでこめられた愛情が伝わってくるような空間だ。ここにいると時を忘れて、オーナーが愛するヘンリー・ダーガーの世界のように、自分が非現実の王国の住人で道路の向こうに広がる現実世界をまるで活動写真を眺めるような気分で傍観してしまう。

もともとは、兵庫でアクセサリーの企画制作をしていたオーナーの桜子さんが、この店をオープンしたのは10年前。モノづくりをしているご主人が群馬の出身だったのもきっかけとなり、友人を加えた3人の共同作業で半年がかりで内装を仕上げた。イメージ通りの壁の質感を出すために漆喰を10数回も重ね塗りし、ペンキを塗っては水で薄めて濃淡をつけ、床はグラインダーで削り、汗と粉塵にまみれた日々が続いた。そんな風に出来上がったこの店は、分身みたいだという。やはりモノづくりをする人のアンテナにひっかかるのか、それぞれの創造力の赴くままに作品の製作に勤しむ人達が多く集まるそう。お客様に頂いたというオブジェや雑貨もしっくり店に馴染んでいる。

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自分のスタイルを変えずに貫き通したからこそ続けてこられたという10年間。前橋では、個性的な店に気軽に人は入って来ないが、何かを越えて店の扉を開けるからこそ新しい冒険が始まり、ディープな人間関係が構築される。人間が好きというより人を深く知ることが好きという桜子さんにとって、ここは出会うべくして出会った場所なのかもしれない。

cafe kandelaar
〒371-0033群馬県前橋市国領町1-13-7
Tel/Fax 027-237-0406
営業時間13:00~19:00 曜日によって~22:00 (要確認)

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