news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

米国疾病管理予防センターが鉛の基準値の見直しを検討

鉛は青みを帯びた銀白色の柔らかい金属で、陶器や魚網の鉛錘、水道管、弾丸、貨幣、屋根瓦、鉛蓄電池、耐食材料、電極材料、はんだ材料、放射線防護材、遮音材、装飾品、塗料などに利用されてきました。有鉛ガソリンにも使用されたことがあり、環境中に広く残存しています。

住宅では塗料に使用されていたこともあり、古い家に使用されていた鉛含有塗料が剥がれ落ちて部屋のダスト中に含まれている場合が報告されています。

鉛は低濃度で神経毒性を発現することが大きな問題となっています。血中の鉛濃度が鉛曝露の指標として有用とされており、血中鉛濃度の基準値が設定されています。

小児では10 μg/dL未満の血中鉛濃度で認識力、注意力、言語機能の障害が観察されています。また近年は、注意力に関する機能障害、攻撃性、非行に関連していることが確認されています。鉛の慢性毒性では生体影響に閾値がないと考えられており、血中鉛濃度は10 μg/dL 以下でも十分ではないとされています。

米国CDCは2004 年の時点では、小児の血中鉛濃度10μg/dL 未満における健康影響について科学的知見の整理を行った結果、10μg/dL 未満の血中鉛濃度で小児の健康に影響をおよぼす証拠はある が、10μg/dL 未満に削減するための有効な対策が明らかでないことから、小児の血中鉛濃度の削減目標10μg/dLをさらに下げることはしないと判断していました。

一方、世界保健機関(WHO)欧州事務局は、近年の研究で10μg/dL未満の血中鉛濃度の小児で知能指数(IQ)の低下が観察されたことから、血中鉛濃度を可能な限り低くするための予防活動を始めるべきだと勧告していました。

その後CDCは、2012年9月には6際未満の小児の基準として、5μg/dL 未満の血中鉛濃度を設定しました。

そして昨年末、米国CDCは、最新の米国における全国調査の結果に基づいて、血中鉛濃度の基準値を数ヶ月以内に3.5μg/dL未満に下げる可能性があると発表しました。

2016年12月30日ロイター公衆衛生ニュースより
https://www.scientificamerican.com/article/exclusive-cdc-considers-lowering-threshold-level-for-lead-exposure/?WT.mc_id=SA_TW_HLTH_NEWS#

鉛は塗料やガソリンに使用されてきましたが、すでに現在では使用禁止となっています。しかし最新の調査でも、米国では小児で平均1.0μg/dL程度曝露しており、3.5μg/dL未満に下げても約2.5%の小児がこの基準値を超えています

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