news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

発達神経毒性物質

先々週、第89回日本産業衛生学会が福島市で開催され、発達神経毒性物質に関するセミナーがありました。その中で、最近同定された12の発達毒性物質が紹介されました。

神経毒性とは、神経系(中枢、末梢、感覚器官)に対する有害作用であり、ヒトで神経毒性を有する物質は214物質確認されています。そのうちヒトで発達神経毒性を有する物質は、最近の報告によると、12物質確認されています。

発達神経毒性とは、胎児期あるいは生後発達期の神経系に対する有害作用です。例えば、メチル水銀による胎児性水俣病、エタノールによる発達障害が以前から報告されています。近年は、小児の学習障害(LD)、注意欠損・多動性障害(ADHD)、自閉症などにも関連していると考えられています。低濃度の鉛への曝露で知能指数(IQ)が低下することも報告されています。

近年、小児のいじめ、引きこもり、自殺等が増加しており、社会問題となっていますが、その原因のひとつに、身の回りの化学物質による発達神経毒性が懸念されています。環境省が進めているエコチル調査(小児環境保健の大規模疫学調査)では、発達神経毒性の調査が含まれています。

以下に、2006年までに知られていた発達神経毒性物質と、それ以降に同定された物質を示します。英国の権威ある医学雑誌「ランセット神経学The Lancet Neurology」で紹介されました。

2006年までに知られていた物質
・ヒ素とその化合物
・鉛(鉛含有塗料、有鉛ガソリンなど)
・メチル水銀(水俣病の原因物質)
・エタノール(アルコール飲料)
・トルエン(有機溶剤)
・ポリ塩化ビフェニル(電気絶縁油等)

2013年に新しく同定された物質
・フッ化物(フロン、フッ素樹脂、歯磨き剤など)
・マンガン
・テトラクロロエチレン(有機塩素系溶剤)
・クロルピリホス(有機リン系殺虫剤)
・DDT/DDE(有機塩素系殺虫剤)
・臭素化ジフェニルエーテル(難燃剤)

参考文献
Grandjean P, Landrigan PJ. Neurobehavioural effects of developmental toxicity. Lancet Neurol. 2014;13(3):330-338.

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