『海の仲間たち』(英題:Happy Bubbles)2013年8月製作
 
『海の仲間たち』(英題:Happy Bubbles)
2013年8月製作

いよいよ夏本番。今回ご紹介させていただくのは、以前ご紹介した「ごんぎつね」のモビールでもイラストを描いていただいたワキタヨシコさんとの共作です。ワキタさんは、福岡の出身で小さな頃から海が近くにあったそうなのです。小さな頃から慣れ親しんでいる魚やタコなどの魚介類は、ワキタさんの十八番(おはこ)で、しばしば好んで描かれている題材なのです。だから、夏向けのモビールを作りたいなぁと思ったときに、「これはワキタさんにお願いしよう!」と真っ先に思いました。こうして、「ごんぎつね」に続く共作モビールの第二弾がスタートしたのです。

今回もまた、ワキタさんはあっという間に素案を出してきてくれました。名古屋育ちで海とは縁遠かった僕が描くものより、魚やカニが活き活きしているのです。今回は上のあぶくの部分が立体になる仕掛けになっていて、このあぶくの部分に光がさすと、穴から光が漏れて、それが本物の海面に光が射したときと同じように見えて、とても素敵なのです。こういう細かいところが発想として自然に出てくるのは、やっぱり実際に海に潜ったりすることに親しんでいないと、無理なんですよね。学校のプールでさえ苦手だった僕は…言わずもがなでしょう。

あぶくの部分に光が差すと、本物の海面を思わせるほど幻想的。
あぶくの部分に光が差すと、本物の海面を思わせるほど幻想的。

そんな素敵なイメージを描いてきてくれたのですが、一つだけこの素案を頂いた時に、大きく変えていただいたことがありました。私たちのほとんどのモビールには、メインとなるキャラクターを作っています。例えば「ごんぎつね」でしたら、「ごん」ですし、「クマ」や「少年」などメインとなるキャラクターを他のモチーフより大きくしたりして、強調しています。これは、物語感を出したいという思いもあり、主人公を少し強調することでそんな効果を狙っているのです。今回、ワキタさんもそれにならってメインのキャラクターを大きくして描いてきてくれました。僕はもうてっきり思い込んでしまっていたのです。「海」の物語の主人公と言えば、「魚」だろうと。レオ=レオニの「スイミー」、映画「ファインディングニモ」…僕の頭に浮かぶのはそんな作品ばかり。

魚やカニが活き活き。変更していただいたタコのシルエットも。
魚やカニが活き活き。
変更していただいたタコのシルエットも。

でも、海辺育ちのワキタさんは、やっぱり違いました。ワキタさんの描いてきてくれた主人公は、なんと「タコ」だったのです。後で聞いた話では、ワキタさんの一番好きなモチーフがタコのようで、自身の自画像のような役割もあったそうなのです。そんなことも知らず、僕はとっさに「ここは魚に変えられませんか?」とお願いしてしまいました。ワキタさんは心よく受け入れてくれて、魚を大きくし、タコをシルエットのみに変えてくれました。でも、今思えば、僕は「海」に関して完全な素人。タコをメインにしたモビールだったら、一体どんなモノができていたのだろう?と今でも思います。