住宅雑誌『日本の美邸 JAPAN QUALITY』1号 チルチンびと別冊
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閉められています。どの家も玄関前はカーポートで占領されているため緑はほとんどなく、住宅地というにはあまりに風景が殺伐としていて愕然としてしまいます。 日本は戦後70年を経て焼け野原から見事に復興をはたし、世界でも有数の豊かな国になりました。 しかしこうした家づくりの現状を見る限り、衣・食・住の住において、本当に豊かになったのかは大いに疑問です。 確かに昔の家に比べれば断熱性もよく、設備も充実して便利にはなってはいますが、それは物質的な豊かさであって、それに見合うだけの精神的豊かさがもたらされているかというと、むしろ退化しているとすら思えてならないのです。 物質的には十分すぎるほどの豊かさを手に入れた今日の日本人がどのような家に住むべきか、そのことを改めて考え直さなければならない時期に来ているような気がしてなりません。自然とともに暮らす素晴らしさ 今日の発達した科学技術をもってすれば、人工的に快適な環境をつくることは難しくはありません。しかしそれだけでは人の心は満たされま「若王子の家」。筆者の義理の両親が住む家。1992年、食堂と台所を改築設計するにあたり、筆者はこの主屋から和の伝統とその魅力を学んだ。(写真=畑 亮)17

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