家とともに受け継がれる先人の粋

家とともに受け継がれる
先人の粋
親世代が70年前に移築再生した明治後期の古民家を改修。
古いものと新しいものを織り交ぜながら完成した住まいで、
母子3人の新しい生活が始まった。
愛知県蒲郡市 注文住宅 小林住建 大場邸
設計・施工=㈲小林住建 写真=畑 耕
- 大黒柱(手前)と地松の梁が印象的な2階居室。
大きな梁が湛える深い陰影。小粋なデザインの古建具。古いものの味わいが、情緒をかきたてる。
大場邸には、奥さんとお子さん二人が暮らしている。亡くなったご主人の親が、50年ほど前にちょっとしたリフォームをして以来、ほとんど手を入れることなく住み続けていた。建物のあちこちに長年の傷みが現れ、今回の大改修に至ったのだという。
- 4層に重なる瓦屋根。
- 既存を生かした木組の架構。「とても頑丈にできていて、昔の職人の腕と心意気を感じました」と小林社長。
3人住まいにはずいぶん広い家だ。小さな家に建て替えようとも考えたが、お子さん二人が古民家改修物件の完成見学会へ足を運んだことをきっかけに、改修を選択した。「うちとよく似た民家で、ぐっとイメージが湧きました」と娘さん。「息子も、味があってよかったって。それに、左官職人だった主人が生前に改修をしたがっていたので、その気持ちを叶えたいなと思ったんです」(奥さん)。
設計と施工は、改修のきっかけとなった物件を手がけた小林住建に依頼。「生活のしやすさ」を第一に希望し、打ち合わせを重ねた。着工の前には、建物を躯体だけの状態まで解体し、構造を隈なく把握した。1階は、傷んでいた部分を減築したうえで、土間があり高低差があった床をフラットに。畳敷きだった居間と隣室を板張りにして、リビング・ダイニング・キッチンをつくった。物置きと化していた2階には、立派な梁があることがわかり、息子さんの部屋として活用することにした。「古いものの趣がとてもよかったんです。2階は、梁を絶対に見せたほうがいいと思ったし、ざーっと並べてしまってあった建具も可愛いな、と。もとあるものの雰囲気を大切に残しながら、暮らしは快適になるように改修しました」(小林住建・小林直人社長)。
- ダイニングからリビングを見る。新しく購入したソファで寛ぐ奥さんと娘さん。
完成からおよそ5カ月。家族の生活はがらりと変わった。テーブルセットやアンティークの照明を新たに買い揃えたダイニングは、奥さんと娘さんのお気に入りの場所。「今までは畳敷きだったので、床に正座して飯台で食事していたんです。椅子の生活は楽ですね」(娘さん)。また、床に断熱材を入れ、窓とサッシを交換したことで、「隙間風だらけで外に住んでいるような感じ」だったという家の中が「かく、静か」になり、とても過ごしやすいのだと話す。
- 仏間内観。先代のセンスを感じる美しいガラス建具。
「新築には新築のよさがあると思うけれど、やっぱり味があっていいんです」と奥さんが声を弾ませる。娘さんも、改修を迷っている人がいたらぜひすすめたいと頷いた。「この雰囲気は新築には出ないです。改修で入れた新材には、あえて古色塗装をしなかったので、古いものが時を経ていい風合いになったように、経年変化を楽しみながら暮らしていって欲しいですね」(小林社長)。
所在地 | 愛知県蒲郡市 |
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家族構成 | 3人 |
面積 | 延床 231.38㎡ |
竣工 | 2019年2月(工期 2018年8月~2019年1月) |
設計・施工 | ㈲小林住建 |
構造形式 | 木造軸組構法 |
主な外部仕上げ | 屋根=三州瓦 外壁=杉 軒天井=杉の鎧張り、土佐漆喰 |
主な内部仕上げ | 天井=杉の踏板天井 壁=漆喰 床=杉、檜 |
有限会社 小林住建
〒443-0013 愛知県蒲郡市大塚町仲野46-1
私たちは時代の流行に関係なく、住む人が心地よくて長く愛される家づくりをめざしています。
温かさや涼しさを感じられる環境、天井の高さや開口部の大きさ、屋根のかたちなど、
居心地のよさを考えたデザインや収納や家での過ごし方など
住まい手の暮らしにそった空間づくりをご提案させていただきます。
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