「平屋-市街地と郊外-」住宅事例

「平屋-市街地と郊外-」

『チルチンびと』126号の特集は、「-市街地と郊外-」

近年あらためて注目を集めている「平屋」は、単なる流行や合理性の選択ではなく、暮らしの質を根本から見直す住まいのかたちとして再評価されています。『チルチンびと』126号では、市街地と郊外という異なる環境を舞台に、多様な平屋の実例を通して、その魅力と可能性を掘り下げました。

市街地の平屋では、限られた敷地条件や周囲からの視線と向き合いながら、中庭やL字・コの字型の平面計画によって、内に開かれた豊かな空間が生み出されています。外に対しては控えめに、内に対してはのびやかに。平屋の低さが、光や風、庭との距離を縮め、都市の中に静かで落ち着いた居場所をつくり出しています。

一方、郊外の平屋は、庭や風景と積極的に関わることで、敷地全体を暮らしの場として捉える住まいが多く見られます。二つの庭に挟まれたリビング、菜園と直結する生活動線、水や石を取り入れた外構計画など、建物と自然が溶け合う構成が、日常に豊かさと余白をもたらしています。平屋ならではの水平性は、視線を遠くまで導き、四季の移ろいを暮らしの中に自然と取り込みます。

また本特集では、新築だけでなく、減築によって二階建てを平屋へと再生した住まいも紹介しています。使わなくなった空間を手放し、自分の手が届くスケールへと住まいを整えるという選択は、これからの住宅のあり方にひとつの示唆を与えています。

126号を通して伝えたいのは、平屋を「小さな家」としてではなく、「暮らしを丁寧に受け止める器」として捉える視点です。年齢や家族構成、土地の条件が変わっても、無理なく、永く住み続けられること。平屋はその静かな強さによって、これからの住まいの原点を問いかけています。

<市街地の平屋>

繁華街と住宅地のはざまに位置する家

千葉県 A邸 設計=大野正博 

千葉県の市街地、繁華街と住宅地のはざまに建つA邸は、外部環境の喧騒や視線を遮りながら、穏やかな暮らしを実現した中庭型の平屋住宅。建物で中庭をぐるりと囲むコートハウスの構成により、採光や通風は内側に集中させ、外周部は防犯と静けさを重視した設計。土間から居間、茶の間、台所へと連続する空間は、中庭と一体となり「ひとつ屋根の下」の安心感を演出。市街地にありながら、内と外が溶け合う、視野の広い住まい。

設計=大野正博 繁華街と住宅地のはざまに位置する家
  • 中庭を囲むコートハウス型平屋
    建物自体が外部への防御壁となり、視線・騒音を遮断しながら、内側に開いた暮らしを実現。
  • 採光を中庭に集約した明るい室内
    大開口から光を取り込み、冬でも日だまりのような暖かさを確保。
  • 土間と薪ストーブが暮らしの中心
    玄関土間に据えた薪ストーブが、家族や来客の自然な居場所をつくる。
  • 内と外が連続する回廊的な空間構成
    濡れ縁やデッキを介し、居間・茶の間・台所が中庭と緩やかにつながる。
  • 市街地に適応した防犯・生活動線計画
    外周は小窓中心とし、サービスヤードや物干し場を視線から隠す工夫を随所に配置。

街中でプライベートと広い開口部を両立する

愛知県稲沢市 S邸 設計・施工=㈱エコ建築考房

愛知県稲沢市の市街地に建つS邸は、人通りの多い生活道路に面しながらも、視線を巧みに遮り、伸びやかな暮らしを実現した平屋住宅。築100年の古民家を建て替え、車庫・庭・平屋を一体で計画することで、街中でもプライベートを確保しつつ大きな開口部を可能にた。深い軒とL字型の平屋プランが、庭との一体感と広がりを演出。国産木材をふんだんに使い、「また100年住み継げる平屋」を目指した、家族のこれからを見据えた住まい。

街中でプライベートと広い開口部を両立する 知県稲沢市 S邸 設計・施工=エコ建築考房
  • 街中でも成立するプライバシー重視の平屋
    車庫と塀で道路からの視線を遮り、安心して大開口を設けた配置計画。
  • L字型プランが生む開放感のある平屋空間
    庭を囲むL字型の平屋とすることで、室内に奥行きと広がりを確保。
  • 大きな窓と深い軒による心地よい居場所
    季節ごとの光と影を楽しみながら、夏の日差しを抑える設計。
  • 暮らしに寄り添う可変性のある平屋設計
    将来、子世帯や孫世代の利用も見据えた間取りと部屋構成。
  • 国産木材を活かした、長寿命な平屋づくり
    スギ浮造りの床や手刻みの構造材を用い、100年続く住まいを志向。

国産木材使用料 一般工務店:8.52㎡ エコ建築考房:35.1㎡
二酸化炭素固定量 一般工務店:5.01t-CO₂ エコ建築考房:20.64t-CO₂

一生を見据えた平屋

栃木県宇都宮市 F邸 設計・施工=無垢杢工房㈱イケダ

栃木県宇都宮市の市街地に建つF邸は、「50年先を見据えて平屋を選んだ」という夫妻の想いから生まれた住まい。限られた敷地条件の中で、玄関からキッチン、水まわりへと一直線につながる動線を重視し、家事や子育てがしやすい平屋を実現。屋根勾配を活かした天井高のあるリビングや、庭とつながる掃き出し窓が、平屋とは思えない伸びやかさを演出。自然素材と手仕事を大切にしながら、家族の暮らしに寄り添う等身大の平屋住宅。

一生を見据えた平屋

栃木県宇都宮市 F邸 設計・施工=無垢杢工房㈱イケダ
  • 将来を見据えたワンフロア完結の平屋
    子育て期から老後まで、暮らしやすさが続く段差の少ない平屋設計。
  • 家事効率を高める一直線の生活動線
    玄関〜キッチン〜水まわりをつなぎ、日々の動きをスムーズに。
  • 勾配天井が生む、開放感のある平屋リビング
    梁を現しにした天井構成で、コンパクトでも広さを感じる空間に。
  • 庭とつながる暮らしを楽しむ平屋の住まい
    ウッドデッキと畑を備え、子どもと自然が身近にある生活。
  • 自然素材を活かした心地よい平屋
    無垢材や漆喰を用い、住むほどに味わいが増す素材選び。

国産木材使用料 一般工務店:8.52㎡ 無垢杢工房 イケダ:25.14㎡
二酸化炭素固定量 一般工務店:5.01t-CO₂ 無垢杢工房 イケダ:14.78t-CO₂

<郊外の平屋>

風土と現在の相克

鹿児島県姶良市 有村邸 設計=堀部安嗣建築設計事務所 施工=㈱創建

鹿児島県姶良市に建つ有村邸は、風土と現代建築の相克をテーマに計画された平屋住宅である。主屋と離れを分棟で配置し、その間に半戸外空間と豊かな庭を挟むことで、建物・自然・暮らしが緩やかにつながる構成とした。建物はあえて小さく抑え、断熱気密性能を高めることで、省エネルギーかつ静穏な居住環境を実現している。土塁や在来種の植栽、焼き杉外壁など、地域の記憶を継承する要素を随所に取り込み、平屋ならではの低さと広がりが、敷地全体をひとつの生活風景として立ち上げている。

風土と現在の相克

鹿児島県姶良市 有村邸 設計=堀部安嗣建築設計事務所
  • 主屋・離れ・半戸外で構成する分棟型平屋
    用途と温熱性能を分け、暮らし方に応じて場所を選べる平屋構成。
  • 建物を抑え、庭を主役にした平屋計画
    建築を風景に溶け込ませ、敷地全体で豊かさを感じさせる設計。
  • 風土に根差した素材と外構
    焼き杉、土塁、溶岩石、在来植栽により地域の記憶を建築に編み込む。
  • 高断熱・高気密による静かな平屋空間
    交通音や降灰の影響を抑え、少ないエネルギーで快適性を確保。
  • 低く、開かれた平屋ならではの環境性能
    風通しと採光に優れ、建物の影が庭を損なわない配置計画。

「茂原の家Ⅲ」を巡る旅

千葉県茂原市 茂原の家Ⅲ 設計=高須賀 晋 施工=㈱持井工務店

千葉県茂原市の郊外に建つ「茂原の家Ⅲ」は、建築家・高須賀晋が手がけた平屋住宅。約500坪の敷地に、主屋とアトリエ棟を平行に配置し、その中央に中庭を抱くコの字型平屋の構成とした。深い軒と濡れ縁、大きな開口部によって内と外が緩やかにつながり、建物全体が庭と一体化する空間体験を生み出している。構造材を現しにした力強い架構と、黒を基調とした内部仕上げ、居間に灯る「暗い明かり」が、静けさと奥行きをもたらす。竣工から30年以上を経ても色褪せることのない、平屋建築の普遍性を体現した住まいである。

「茂原の家Ⅲ」を巡る旅
千葉県茂原市 設計=高須賀 晋 施工=㈱持井工務店
  • 中庭を抱くコの字型平屋プラン
    屋根に囲まれた中庭が、空の広がりと強い一体感を生む平屋構成。
  • 建物と庭が連続する平屋の空間設計
    濡れ縁と深い軒により、室内外の境界を曖昧にする。
  • 構造を美として見せる平屋建築
    登り梁や構造材を現し、シンプルかつ大胆な空間を形成。
  • 居間に灯る「暗い明かり」
    必要以上に照らさない照明計画が、平屋ならではの落ち着きを生む。
  • 時を経て完成する平屋の佇まい
    素材の経年変化を受け入れ、暮らしとともに深まる建築。

家庭菜園を楽しむ自然派夫婦

千葉県千葉市 S邸 設計・施工=㈱持井工務店

千葉県千葉市の郊外に建つS邸は、庭と菜園を暮らしの中心に据えた平屋住宅である。約450坪の敷地に、平屋の住居と納屋をゆったりと配置し、土に触れる日常そのものを住まいの価値としている。大開口とデッキを介して室内と庭が連続し、収穫物をそのままキッチンへ運べる動線や、納屋に設けた流しなど、菜園生活を支える工夫が随所に施されている。無垢材や漆喰といった自然素材を用いた室内は、光と風に満ち、時間とともに愛着が深まる。平屋ならではの低さと開放感が、穏やかで持続的な暮らしを支えている。

家庭菜園を楽しむ自然派夫婦

S邸 設計・施工=㈱持井工務店
  • 庭・菜園と一体で成立する平屋計画
    住居・デッキ・菜園が連続し、屋外作業が日常に自然と組み込まれる。
  • 菜園生活を支える機能的な動線
    納屋の流しや外部から直接入れるシャワー室など、土仕事に配慮した設え。
  • 大開口が生む開放的な平屋の居場所
    デッキ越しに庭を望み、内と外の境界を感じさせない空間構成。
  • 自然素材による健やかな室内環境
    無垢材と漆喰を用い、アレルギーにも配慮した穏やかな住空間。
  • 暮らしとともに成熟する平屋住宅
    住まいも菜園も手をかけるほどに味わいが増し、長く住み継がれる構え。

国産木材使用料 一般工務店:8.52㎡ 持井工務店:31.50㎡
二酸化炭素固定量 一般工務店:5.01t-CO₂ 持井工務店:18.53t-CO₂

緑を眺める大きな窓と豊かな空間

岐阜県岐阜市 大河の家2 設計=後藤耕太

岐阜県岐阜市の住宅地に建つ「大洞の家2」は、周囲の緑を積極的に取り込み、室内で自然を眺めることを重視した平屋住宅である。敷地南東の眺めのよい方向に大きな窓を設け、道路側からの視線は外構で遮断。リビングは床を一段下げ、ダイニングは天井高を抑えるなど、平屋でありながら空間に高低差とリズムを与えている。天井現しや中二階、曲線を描く階段が立体感を生み、どの居場所からも季節の移ろいを感じられる。平屋の水平性に、豊かな奥行きを重ねた住まいである。からも季節の移ろいを感じられる。平屋の水平性に、豊かな奥行きを重ねた住まいである。

歴史にある街並みに調和する佇まい

福岡県朝倉氏 Y邸 設計・施工=㈱未来工房
  • 緑を切り取る大きな窓を持つ平屋
    借景を室内に取り込み、四季の変化を暮らしの中で楽しむ設計。
  • 視線を制御した開放的な平屋計画
    道路側は塀で囲い、安心感と開放感を両立。影の美。
  • 床・天井に変化を与えた立体的な平屋空間
    段差や天井高の調整により、単調さを排した構成。
  • 中二階と曲線階段が生む空間のリズム
    平屋に奥行きと動きを与える象徴的な要素。
  • 経年変化を楽しむ素材選び
    無垢材や石、鉄を用い、時間とともに深みを増す住まい。

暮らしに寄り添う減築した平屋

埼玉県 S邸 改修設計=独楽蔵

埼玉県に建つS邸は、築50年の二階建て住宅を減築し、現在の暮らしに合った平屋へと再構成した住まいである。家族構成や将来のメンテナンスを見据え、「自分の手が届く範囲で暮らす」ことを軸に計画された。二階を撤去し、使われていなかった和室二間を明るく開放的なLDKへ転換。断熱性や防犯性を高めながら、既存の数寄屋造りの床の間や欄間、古建具を丁寧に残し、住まいの記憶を継承している。雑木の庭と通り抜ける風が日常に寄り添い、減築という選択が、心身ともに軽やかな平屋の暮らしを実現している。

暮らしに寄り添う減築した平屋

埼玉県 S邸 改修設計=独楽蔵
  • 二階建てを減築した再生型の平屋住宅
    不要なボリュームをそぎ落とし、暮らしに適したサイズへ再構築。
  • 既存の意匠を活かした平屋リノベーション
    床の間、欄間、建具など、住まいの記憶を丁寧に継承。
  • 和室二間をLDKへ転換した平屋の中心空間
    明るさと断熱性を高め、日常の居場所を集約。
  • 雑木の庭と風が通り抜ける平屋の配置
    南北の庭をつなぎ、自然を身近に感じる住環境を形成。
  • 将来を見据えたバリアフリーと動線計画
    段差を抑え、掃除や維持管理の負担を軽減する設計。

歴史にある街並みに調和する佇まい

福岡県朝倉市 Y邸 設計・施工=㈱未来工房

福岡県朝倉市秋月の歴史ある町並みに建つY邸は、夫婦二人が終の棲家として選んだ平屋住宅である。城下町の景観に配慮し、和の趣を基調としながらも、自然素材と現代的な性能を取り入れた住まいを実現した。平屋とすることで将来のバリアフリー性を確保し、カーテンを閉めずに過ごせる大きな開口部からは、周囲の自然や四季の移ろいを室内に取り込む。L字型の平面計画により、外部からの視線を遮りつつ、ウッドデッキと一体となった開放的な居場所を形成。歴史と暮らしが穏やかに重なり合う平屋である。

歴史にある街並みに調和する佇まい

福岡県朝倉氏 Y邸 設計・施工=㈱未来工房
  • 町並み景観と調和する平屋の外観計画
    景観条例に配慮し、瓦屋根と低い軒で城下町の風景に溶け込む。
  • 終の棲家を見据えたバリアフリーの平屋
    段差を抑え、将来も安心して暮らし続けられる構成。
  • L字型平屋が生む内向きの開放感
    視線を遮りながら、西側の自然を存分に楽しめる配置計画。
  • 土間と薪ストーブを備えた平屋の居場所
    玄関から続く土間が、内外をつなぐ緩衝空間として機能。
  • 和と洋が調和する素材とインテリア
    現しの木組やステンドグラスを取り入れ、住まい手の感性を反映。

国産木材使用料 一般工務店:8.52㎡ 未来工房:29.2㎡
二酸化炭素固定量 一般工務店:5.01t-CO₂ 持井工務店:17.11t-CO₂

庭と住まいが響き合う平屋

山口県下関市 池澤邸 設計・施工=㈱安成工務店

山口県下関市に建つ池澤邸は、庭と住まいの一体感を主題に計画された平屋住宅である。南北に二つの庭を設け、その間にリビングを配置することで、どの居場所からも緑と水の気配を感じられる構成とした。石や植栽、水が伝う庭は室内の延長として設えられ、平屋ならではの低さと開放感が、穏やかな時間を生み出している。深い軒と大きな開口部により、視線や日射を調整しながら自然を取り込む設計とし、自然素材を多用した室内は静かで落ち着いた佇まいを見せる。庭と暮らしが響き合う、成熟した平屋のかたちである。

庭と住まいが響き合う平屋

山口県下関市 池澤邸 設計・施工=㈱安成工務店
  • 南北二つの庭に挟まれた平屋構成
    リビングを中心に、異なる表情の庭を日常的に楽しめる配置計画。
  • 庭と連続する開口部とウッドデッキ
    内と外の境界を曖昧にし、平屋ならではの一体感を強調。
  • 水と石を取り入れた庭の設え
    水が伝う石組みが、視覚と音で暮らしに静けさをもたらす。
  • 自然素材を活かした落ち着きある室内
    無垢材や左官壁、珪藻土を用い、経年変化を楽しめる空間。
  • 将来を見据えたワンフロアの平屋動線
    水まわりや収納をゆったり確保し、長く快適に暮らせる計画。

12月11日(木)発売

チルチンびと126号 「平屋-市街地と郊外-」

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