有道(うとう)しゃくし
随筆家、白洲正子氏が著書『日月抄』の中で、杓子の中の王様と讃えた「有道しゃくし」。飛騨地方の山里、有道地区(現・高山市久々野町)で、木の成長が止まる秋から冬の間に切りだされた地元の良質なホオノキを使って、ひとつひとつ手作業でつくられた木杓子です。型を使わず丸太から鉈で木取りして、大まかに粗取りし、出刃包丁やノミを使って形成し、しゃくしカンナと呼ばれる湾曲した独特の刃物で、すくう部分を彫って仕上げます。継ぎ目のない一本の材料で作られ、波模様のように残った刃物の跡が特徴で、これが具材を滑りにくくします。また金属製のお玉と違って具に刺さることもなく嫌な音を出さず、口に当てても熱くならず、防腐剤や漂白剤など一切使わず、やわらかく優しい色合いを持つ、実用的な調理道具です。
江戸時代後期より農閑期の貴重な現金収入として作られていましたが、時代の流れで金物に押され売れなくなり、昭和四十二年の全戸離村によって杓子作りも姿を消したかと思われていました。その後、地元の工芸品が消滅してしまうことを危惧する町民たちによって、有道しゃくし保存会が結成され、若手の木工作家、奥井京介さんら数名の職人によって、現代の鍋にも合うような形に改良したりと工夫を重ねながら、その技術を現在に伝えています。
有道しゃくし 現代版 2,700円 / 復刻版 2,800円(税・送料別)
有道しゃくし 奥井京介
岐阜県高山市朝日町甲204-1-7
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