医王山のウスバシロチョウ

仕事でパソコンを見過ぎて疲弊している。夜も疲れが取れず眠りが浅い。やるべきことはたまる一方で、ちっとも儲からない。・・・なんて、現実を書くとつらいので、書かないようにしてきたが、少し書きたくなるくらい疲弊、そして寝不足だ。

加えて車の移動も多くて、事故を起こさないか心配。無理をしないようにしなくっちゃ・・・ふと時間が出来て、医王山の近くで休憩した。窓をあけて空気を吸っていると、ふらふら飛んできた白い蝶が。薄羽白蝶(ウスバシロチョウ)だ!何年ぶりかで見た。

H社オークションの海外送金がスムーズにいかない。以前は要らなかった書類を提出せねばならず、しかも十種類ほども。こんな小さな個人事業主の輸入をいちいち審査している時間はY銀行にあるのかなと思いながら、オークション会社へは事情を必死に説明。最後に会社を訪ねたのももう五年ほどは前なので、こんなとき顔が見えないのはとても心配になる。

さらに、N社オークションに私の専門の1900年ごろのウィーンの雑誌が出品。状態が良さそうな上に興味深い旧蔵印である。悩みに悩んだが思い切って入札した。社長さんに聞きたいこともあり、久しぶりに連絡が取れたのは良かった。結果は、びっくりするほどの負け具合。こんなことだと相場が上がってしまう。老舗でもなんでもない一代ポッキリの私が、一生のうちに頑張れる額はほんのわずかだ。なぜもっと早くに、背伸び出来たときに、努力しなかったのかと考えるとすっかり悲しい気持ちになった。

自分の専門の品だと、在庫しても売りたくなくなるのではないかと、怖い気持ちもこれまであったのだ。日本で需要があるのかというのも、もちろん心配だった。でも、専門こそ無理をしてでも気張るべきだったのかもしれない。指導教官N先生にも思わず電話をした。研究者と本屋の会話だったが、昔と同じく楽しく話せて元気を取り戻した。

ウィーンのある本屋さんのことを思い出す。自分のコレクションを売られており、ネットは一切しないおじいさん。メールも別の本屋さんを通じてしか届かない。だが、業界の信頼は厚い。とにかく商品が素晴らしいのだ。もう少しだけ頑張って仕入れのお金が貯まれば、今年あたり訪ねる計画だった。恐れ多いとはいえ、私だってその分野を永年必死で研究してきたのだ。ようやく覚悟が決まった今、海外に気楽に行けない世の中になっているこの悲しさ。

もちろん、こんな中でも、行き来している人たちはいる。ご家族が海外出身だったり、双方に家を持っている人たちだ。今年はLさんとSさん御夫妻には会えなかった。私が京都に行けなかったから。代わりに父母が会い、一期一会の楽しいひとときの様子を伝えてくれた。開業時ミュンヘンで、古本のことを色々教えてくださった時間が今となっては夢のようだ。東京でお会いしたこともあった。金沢に遊びにいらしてくださったこともあった。金沢とミュンヘンを行き来されるAさんには会えた。例年の半年間の日本滞在を終え、来週にはドイツへ立たれる。その前にまた会うつもりだ。