あなたのお住まい地域では空き家の問題はどのくらい深刻になっているでしょうか。私の住む小豆島町では空き家問題が深刻化し、町役場でも本格的な計画の策定をはじめました。

外観や屋根、柱の状況など総合的に特定空き家かどうか判断されます
外観や屋根、柱の状況など総合的に特定空き家かどうか判断されます

空き家の問題は「活かすこと(活用)」と「こわすこと(除却)」で町が安全で快適な暮らしに向かうことを目標にしますが、今後も過疎化が進むとされている小豆島では、空き家問題も長期的な取り組みが必要になってきます。空き家は状態の良いものは出来るだけ賃貸(売買)して、UIJターン希望の方の住居にしたり地域活動・観光案内所などに役立てるなどの検討がされていますが、「除却」せざるをえない空き家はどうでしょうか。

木々に侵食されると屋根や外壁などから雨水が入り込み住むのが難しくなります
木々に侵食されると屋根や外壁などから雨水が入り込み住むのが難しくなります

国土交通省は昨年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を公布しました。これは放置されてしまっている空き家が、住民の生活に危険や迷惑を及ぼすとされたためです。この法律によって、自治体は空き家に関する様々な取り組みを行なわなければなりません。空き家対策の計画をたてること、それぞれの自治体の空き家の量や状態をまとめる努力をすることが定められました。使える空き家があっても持ち主が分からないままでは対策の仕様がありません。空き家の実態を正しく知るためには、一軒一軒まわるような大規模なリサーチが必要となり、また周囲にお住まいの方の協力が必要です。さらに随時更新していかなければ数年後にはデータベースの価値を失いかねません。しかし、こうして得られた情報は、公開方法次第ではUIJターン希望者や新しくお仕事を作られる方にとっても価値のある情報になります。実際に空き家の多かった地域に家族連れで移住されたところ、自治会の方々の積極的なフォローが評判となり、いまや空き家が足りないという状況にもなっています。

ぽっかりと出来た空き地
ぽっかりと出来た空き地

合わせて、倒壊の可能性がある空き家や衛生上有害な空き家といった、いわゆる「特定空き家(老朽危険空き家)」と呼ばれる建物には立ち入り調査や指導、勧告、命令が可能になりました。これまで廃墟になって放置されていた建物や、ゴミをためている空き家などの持ち主に、取り壊しや改善するように指示出来るようになったのです。瓦屋根が落ちている住居や家屋に侵入した植物が道路へ大きくはみ出すなどした建物について、役場への相談も多いようです。私の住む小豆島町では、こうした「特定空き家」の除去に、費用の8割以内、上限160万円の補助金の交付をはじめました。(平成27年7月1日施行)

倒壊する前に解体することが必要です
倒壊する前に解体することが必要です
内部の様子
内部の様子

これからは、空き家をどうするかという問題とともに、空き家をつくらない仕掛けが必要になります。一人暮らしの高齢者が施設に入ったり、亡くなったりする前に、ご本人とご家族の意思を地域で知っておくことが出来れば、「家」が「空き家」になる期間を短くすることが出来ます。空き家は個人の問題をこえて集落や地域全体の問題へと変化してきているように感じます。残された人と地域のためにも家をどうするかという議論が増えてほしいと思います。

店舗として新しく生まれ変わることもあります
店舗として新しく生まれ変わることもあります

 

プロフィール

向井達也
1989年奈良県生まれ。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科修了。dot architects(建築)のスタッフとして家具や店舗什器制作、展示設営などを行う。瀬戸内国際芸術祭2013をきっかけに香川県小豆島町に移住。現在は小豆島町地域おこし協力隊として芸術祭で作られた建物を活用した取り組みや空き地空き家の再生プロジェクトなどを行なっている。
プロフィール写真
Photo:Hideaki Hamada