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セツとダビデとデュフィ展

綾 幸子(イラストレーター)
1985年~1991?年在籍

セツでの初めての裸体デッサンの日、先生は「女の子は恥ずかしがって男のモデルのお尻ばっかり描いているけれど、それじゃ勉強にならないから前にまわって、にらみつけて描いてやりなさい!」といいます。
「はい!」素直に前に回ってびっくり!それまでの私の男性ヌードはミケランジェロのダビデでした。心の中で、「ダビデのうそつき!!」とミケランジェロを、ののしりました。にらみつけるどころではありません。心の動揺を、みんなに知られたら恥しい気がして必死にデッサンしました。その後は落ちついて自分の気にいったポーズを探すことができる様になりました。ショック治療って大切です。
 先生は「うん!うまい!みんなもよく見なさい!」と言って自分のデッサンを黒板に貼って、別の教室へ。生徒は、わらわらと黒板の前でそれをうっとり眺めます。こんな線が描けるようになりたいけれど、少しもそんな気がしない。
 セツでは、落ちこぼれでした。Aなんて、ほとんどもらった事はなく、どうしてよいか、自分のスタイルも探さず、あがいていました。でも、くじけず学校に通っていたら、まぐれでセツ・アート展に入選しました。信じられなくて、会場で自分の絵を見つけられない位でした。
 そんななかある日、わかったのです。「ああ!自分が好きなものを自由に描けばいいんだ!」
 卒業してからデュフィの展覧会で、セツ先生に偶然お会いしました。遠くからでも、すぐわかります。話すネタを考えてからでないと話かけられなかったのに思わず「セツ先生!」と話かけてしまいました。内覧会でいくらでも見られそうなのに、ちゃんと会期中にいらっしゃるんだなぁと感動しました。ご挨拶した後も何度もすれ違ってしまい、一寸バツが悪かったけれど、先生も私も同じ見方をするのかなと嬉しかったです。だから、デュフィを見るといつもセツ先生を思い出します。
 大人になると自分の感情を素直に表す事が難しくなると思うのですが、セツでは、そんなツマラナイ事は気にしないで、自由に表現していい…そのステキさを知る事が出来たのだと思います。

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  1. 星信郎ゆう より:

    綾さんこんにちは! 綾さんの描く自由奔放は初めて観ました、デュフィ大好きのセツ先生がデュフィの絵の前で、面白い!とっても素敵です。
    セツ先生はずっとむかし若いころはデュフィがあんまり好きでなかったらしい、日本の安手な茶碗の絵柄のように感じたそうですよ。 しかししかし後には。
    先生がフランスのどこかで風景写生をしている様子を後ろからしばらく見ていた青年が、立ち去るときに、ラウル デュフィ!と野次ったそうです、先生は思わずメルシー!と言ってしまったそうです。

    • より:

      星先生 ありがとうございます!慌ててお返事書いたのに送信仕損なってしまったようです。お返事遅くなり申し訳ありません。星先生に「面白い!とっても素敵です。」
      なんて言っていただけて、とても嬉しいです。実は悩んじゃいました。
      私はセツ先生のおかげで、もっとデュフィが好きになったのに、、(笑)。その事を伺ってから、フランスのエピソードを読むと余計楽しいです。

  2. Kendrick Collom より:

    Cool article it’s really. Friend on mine has long been awaiting just for this content.

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