奥村まことの方丈記

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ある日安倍総理大臣が国際コンペで1等になり基本設計料も支払われたザハ・ハデイッド女史の当選案を白紙化した。一国の総理大臣は大した権限を持っているのだとびっくりした。しかしそのことによって多くの現実が明らかになった。次なる手段として選ばれた方法は建設会社を選ぶということであった。建築家を選ぶことではなかった。申し出た建設会社が(ジョイントベンチャーではあるが)2社しかなかったのも驚きであったが、2社のA案B案はそれぞれの建設会社に附属していた建築家の案であった。その段階で初めて建築家の名前が明らかになった。なるほどそれでいいのだ。

問題はその2案である。やむを得ない状況ではあると言うもののコンセプトがない。より早くて、より安くて、より丈夫なものが選ばれた。状況がこのような場合これしか考えようがない。もしも私ならばまずはあそこには建てない。サッカーもラグビーもその他の競技場も各地にあるではないか。開会式の会場さえあればいい。世界に類をみない野外開会式というのをやってみようではないか。高度な技術をもってすれば天空に絵を描くこともできる。仮設の席は必要かもしれないが後々の転用を考えればよい。

雨だったらどうする。ならば5日間くらい候補日をつくっておけば余裕である。もしもどうしても建物をたてなければいけないのであればあのような形にはしない。全体形は四角く軽量化を図る。地下はすべて駐車場と設備のために用いユニットで構成された浮き構造とする。上物は小さな部材が組み合わさって大スパンを形成するような構造とする。建物は極力軽くて、安くて、丈夫なものとする。

一番大切なのは椅子である。椅子は単体としても美しく解体組立が可能。それ自体が各国語の同時通訳が可能な端末であること。このプロジェクトによって世界的に通用する特許がいくつも生まれる。全体の建物の形は四角いと言ったが天窓も四角いから開閉は安全である。全体を大きな緑色の森とする。駅からのアプローチも富士見の間もあったり自然となじんでいる。技術にお金をかけてなおかつ総工費もおさえたい。常に建築家は護りの姿勢ではなく前進しなければいけない。

 

メインスタジアム「杜」