こどもの日に思うこと

先日、イベントに出店していたら、昔からモビールを購入いただいているお客さまと久々にお会いすることができました。しばらくコロナ禍の影響でイベントもなくなり、お客様と直接お会いする機会も減っていたので、嬉しい再会でした。その際「あの時、赤ちゃんだった子が、もう8歳になりました」と報告してくれました。まだマニュモビールズを始めて間もない頃、生まれたばかりの赤ちゃんのために初めてモビールを飾っていただいたのです。その後もイベントに来てくださったり知人へのプレゼントにとモビールを選んでいただいたりしていました。それから8年が経ち、今でもこうして会いに来てくださり、お子様の成長を伝えてくださって、とても嬉しかったです。

初めて作ったモビール「太鼓を叩くクマ」を眺める赤ちゃん。今は何歳になったかな?
初めて作ったモビール「太鼓を叩くクマ」を眺める赤ちゃん。今は何歳になったかな?

じつはマニュモビールズを始める際に、大人向けのモビールにするか、子ども向けのモビールにするかでたくさん悩みました。以前に書いた通り、モビールとは元々はアート作品の呼称で、「動く彫刻」という意味です。北欧で生まれた知育玩具の形態はあくまで一つのヴァリエーションであって、大人向けのインテリアとしてのモビールもじつはたくさんあるのです。大人向けにするか、子ども向けにするか。これは大きな選択です。実際、その頃の自分の性質としては、大人向けの方が合っていると思っていました。それを覆してまで子ども向けの方を選んだのは、自分に子どもが産まれたことも大きかったのですが、もう一つ大人向けのプロダクトを作る場合、どうしてもトレンドを意識し続けなくてはならない気がしたからです。もともと消費社会に疑問があって始めたことだったので、流行に左右されないプロダクトを作ることが目的でした。

あの時に大人向けを選んでいたら、一体どういうモビールが生まれていたのだろう?と今でも時々考えるのですが、やはり子ども向けを選んでよかったと思います。正直なことを言うと、モビールはママには好評ですが、子どもにはウケがあまりよくないのです。百貨店のおもちゃ売り場などに立つこともありますが、子どもたちの動きを観察しているとゲームやミニカー、その他のキャラクターグッズなどに駆け出していくことが多いです。モビールは天井に飾ってあるので気づかないこともあるぐらいです。子どもたちにとっては、やはりゲームやその他のきらびやかなオモチャの方が魅力的に映るのでしょう。でも、赤ちゃんの時に頭上に飾ってあるのを見ていたり、小さな頃に部屋に飾ってあるのを見ていたら、無意識のうちに目に映り込み、何かを感じ取ってもらえていると信じています。そして、むしろそういったほんの少しの変化の方が、劇的な喜びよりも大事だと僕は思うのです。大人向けのインテリアとしてのモビールを選んでいたら、こんなにも子どもたちのことを考えることはなかったでしょう。流行に合ったものを作るのも大事なことですが、昔から変わらない部分も確かにあって、そこに響くものを作れたらよいなぁと思うのです。

子供の感性に響くモビールを目指して
子供の感性に響くモビールを目指して

2013年から始めたマニュモビールズも、今年で9年目です。あの時赤ちゃんだった子どもたちが今ではもう小学生になっていて、とても感慨深いものがあります。マニュモビールズのモビールを見て育った世代というのが今後出てきて、何か感性の部分で優れたところがあるなら、こんなにも嬉しいことはありません。マニュモビールズも9歳、まだまだ子どもなのです。20年目を迎えて大人になったとき、一緒に大人になってきた、かつて赤ちゃんだった子どもたちの姿を見るのが、今からとても楽しみです。
これからもずっと、赤ちゃんや子どもたちの心にそっと響くモノを作っていけたらと思います。