協働のススメ

今年の夏に子供グッズを製作するメーカー3社が集まり、一つのプロジェクトを始めることになりました。ことのはじまりは昨年の10月。大阪の百貨店のイベントで、たまたま以前から顔見知りだった3社に声がかかり、久々に会うことになったのです。他の2組も子供グッズを手がけるブランドです。その1組は、大阪で木のおもちゃを手がけるdouさん、そしてもう1組は、東京でバストイ(お風呂グッズ)をメインに手がけるOYATOCOさん。そして、マニュモビールズが名古屋なので、ちょうど東名阪で分かれています。つくるものは全然別物なのですが、製品がまとっている空気感や雰囲気が3組とも似ていると感じていました。さらに少人数で運営しているところも共通点でした。

以前から、同じ分野の企業同士でも、競争を前提としたライバルになるのではなくて、何か一緒にパートナーシップを組んで良い成果を出せないかと考えていました。競争を前提にしてしまうと、心がギスギスして、仕事をしていても楽しくないからです。限られた椅子を奪い合うイス取りゲームをするよりは、限られた椅子をどうシェアするかを考えた方がクリエイティブなようにも思います。そんな思いから、イベント終了後に思い切って「一緒に何かやりませんか?」と2組にお声がけさせていただいたのです。今思えば漠然とした「何か」によく乗ってくれたと思うのですが、2組は快く了解してくれました。そして、今年の1月から月に一回のウェブミーティングがスタートしました。
最初は、それぞれがプロジェクト名を持ち寄り、話し合いながら決めていきました。プロジェクト名は最終的に「Under One Roof」に決まりました。日本語で「ひとつ屋根の下」という意味ですが、3組とも子どもや家族が楽しめる製品を作っている会社なので、家をイメージさせるフレーズで、人情味もありクールでもあり、とても良いと思いました。

Under One Roofのロゴ。
Under One Roofのロゴ。

その後、「まずはイベントをしよう」という話になり、皆でたくさんのことを話し合いながら、ひとつのイベントを作っていきました。そのイベントを今年の夏に、昨年と同じ大阪の百貨店で開催しました。イベントの名前は「なんでもない日の贈りもの」。特別な日だけではなく、なんでもない日にも贈りものを、をコンセプトにイメージカラーやコピーライティングに始まり、内容はもちろん空間の設計、什器の選定、ノベルティやカードなどの配布物のデザイン、その他もろもろの全てを3組だけで作り上げていきました。

イベント「なんでもない日の贈りもの」の風景。3組でアイデアを出し合いながら作り上げました。

 

その経験は、本当にエキサイティングで、とても楽しい時間でした。自分一人では決して思いつかない角度からの提案をしてくれたり、デザインに対する考え方や仕事の進め方などたくさんの刺激と発見がありました。そして何より嬉しかったのは、仕事のことを話し合える仲間ができたことでした。大きな組織では異なるかもしれませんが、私たちのように小さな組織の中で、自分たちだけで切り盛りしていると、視野が狭まっていく時があります。同じ業界で同じような仕事をする人だからこそ分かる悩みなどを、気楽に話し合える場ができたことが本当に価値のあることでした。

自分だけではできないこと、3組だからできることを、このプロジェクトでは発信していきたいと考えています。まだまだ生まれたばかりのヒヨコのようなプロジェクトですが、今後も様々なことを企画していくつもりです。「協働」という言葉が様々な場所で交わされるようになりました。その言葉に当てはまるかは分かりませんが、こんな風にお互いを尊重しながら、気軽にシェアできる場が増えていくと良いなと思います。

Under One Roofをイメージして作ったモビール。今後は3組のコラボ商品や限定商品なども製作していく予定。