雑誌「チルチンびと」95号掲載 栃木県 無垢杢工房㈱イケダ
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119喰壁と梁をすべて現しにした天井が、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。池田社長は「町家なので、木が見える真壁にしました。漆喰壁の下地は木摺り。木摺り材も当社で挽いた檜で、砂漆喰を2回塗った上に漆喰で仕上げています」と話す。晃徳さんも「木を表に出すことで、和の趣を醸し出すとともに、メンテナンスがしやすくなり、家が長持ちするメリットがあります」と頷く。 さらに、S邸に使われている木は、すべてが栃木県産の「とちぎ材」だ。桁は80年生の檜、柱と梁は檜、床は30ミリ厚の杉を使っている。県でもとちぎ材を使った家づくりを、建主への補助制度や、とちぎ県産材木造住宅コンクール(平成28年度は無垢杢工房 ㈱イケダが最優秀賞を受賞)などで支援しており(121ページコラム参照)、県産材への理解も深まりつつあるという。晃徳さんは「我が社が手がける家のほとんどがオールとちぎ材。多くの人に地元の木のよさを知っていただき、とちぎ材のよさを生かした家づくりに取り組むことが使命だと考えています」と力強く語った。この門前町で呉服屋・洋品店を営んでいたので、糸屋格子を玄関戸、出格子、出庇に取り入れ、外観のシンボルとしました」。 繊細な糸屋格子の建具は、もちろん無垢杢工房 ㈱イケダが自社で挽いた材でつくったオリジナルで、建具には狂いにくい柾目材のみを用いているという。設計や意匠の面でも、同社の素材や技といった強みが反映されているのだ。 もとが商家だったため、間口3間半で奥に長い、まさに町家1 日光街道に面した外観。糸屋格子と深い軒、漆喰壁が端正な表情を見せる。手前は駐車スペース。2 玄関を入ると、広い土間に迎えられる。土間の左手には客間、右手には納戸を設けた。沓脱石には白河石を使っている。 3 広々とした土間玄関。内側から見る格子戸も美しい。 4 玄関脇の客間から格子戸越しに外を見る。のつくりのS邸。玄関を入ると、広い土間が広がり、その横には客間が、奥にキッチンやダイニングといった生活空間が広がる。 取材時は引っ越し前の家具などが入っていない状態だったが、真壁づくりの漆オールとちぎ材で木の魅力溢れる家を建てる43

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