雑誌「チルチンびと」74号掲載 栃木県 無垢杢工房㈱イケダ
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りで、引っ越したばかりの頃はずっとデッキで甲羅干ししていたそうだ。 以前はご主人の職場のある小山市のアパートに暮らしていた鷹箸さん一家。いつかは一戸建てと考えていたところ、ご主人の実家の近くであるこの土地が見つかり、すぐに購入。同じく家を建てようとしていた友人から『チルチンびと』を紹介され、『チルチンびと「地域主義工務店」の会』の存在を知り、イケダのオープンハウスに赴くこととなった。「一目見て気に入りました。私たちの希望のままだったから。吹き抜けがあって、大きなデッキがあって、木をたくさん使った家」とご主人。造り付けの建具や家具のシンプルなデザインも夫妻の好みと合致した。 最初の面談の際、夫妻は同社の池田光一社長から木についてたくさんの話を聞いたそうだ。「木の吸放湿性や健康への影響から、木を囲むと「困」る、といった漢字ウンチクまで。気づいたら3時間(笑)。もう素材に間違いはないなと確信しました」とご主人。同社では、原木の仕入れから木材の加工・販売、住宅施工に家具や建具の製造まで一貫して行っている。 打ち合わせでは同社の設計士・髙山毅さんの確かな設計知識が印象深かったと夫妻は話す。奥さんは、当初、自然と一体化するためになるべく多く窓をつくって欲しいと頼んだそうだ。でも、「窓は多ければよいのではありません」と髙山さんはきっぱり。無駄な窓は風の流れを妨げ、西側に大きな窓をつくると、西日が差し込んで夏場は暑くて耐えられない。髙山さんは、玄関や和室の欄間を無双窓にし、和室にはさらに地窓を設けるなど、風の通り道を工夫。取材に訪れた夏の日中も室内には心地よい風が通る。 また、髙山さんは植栽を依頼した造園会社㈱ambientalistaとともに、鷹箸邸の庭の木がどれだけCO2を吸収しているのか、どんな鳥がやってくるのかなどを詳細に記したビオトープレポートをつくって夫妻に渡した。「私たちの自然への思いを汲み取ってくれたんだな、と嬉しかったですね」とご主人は振り返る。「キッチンに立つと、庭側の窓からちょうどヒメシャラの緑が目に入るんです」と奥さん。住み始めてから気づいた、そんな演出にもとても満足しているそうだ。キッチンからリビングを見る。地元・栃木の葛生漆喰の壁が美しい。建て主の思いを汲み取って192

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