雑誌「チルチンびと」64号掲載 栃木県 ㈲響屋
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夫婦でゆっくり過ごしたい。そんな生活を思い浮かべたとき、まずご主人が考えたの小径を抜けて玄関扉を開けると、大きくて抜けのよい板の間がある。隣には畳敷きの小上がりがあり、広々とした土間リビングへと続く。小上がりの正面には、奥さまがひと目ぼれしたという堂々たる風格の薪ストーブが置かれている。炎の暖かさに包まれた土間で、庭の草花や夜空を眺めながらの一杯。ここは、訪れる人につい長居をさせてしまう、居心地の良さに満ちている。
「こうやって火を眺めていると、子どもの頃を思い出します。夕方庭先に家族みんなが集まって焚き火をするのが、1日が終わる合図だったよね」と薪ストーブの火を見つめながら語る奥さまのかたわらで「うん、うん」とうなずくご主人。「私と主人は『動』と『静』みたいな正反対の性格だけれど、育った環境や価値観がとても似ていたのね。それでもこの家を建てるまで、これほど趣味が同じだとは気づきませんでした」と奥さまが笑うと、無口なご主人も照れたような顔で静かに微笑む。
これまで毎日24時間気が抜けない自営業を続けてきたCさん夫婦。子育てもそろそろひと段落し、週末は夫婦でゆっくり過ごしたい。そんな生活を思い浮かべたとき、まずご主人が考えたのは、湯船につかりながら心ゆくまで栃木の名山、男体山と女峰山の大展望を楽しむこと。奥さまは、本格的なしつらえの茶室をつくって趣味の茶道を極めることだった。
1階西側の奥、この家で最も静かな位置に茶室がある。5年前、ご主人や息子さんたちとともに習い始めた茶道は、今や奥さまの生きがい。千利休の流れを汲む宗偏流の先生は、とても魅力的な方だとか。「ここに先生をお呼びして、お茶会を開きたいですね。掛け軸やお花など、季節のしつらえ一つにしても奥が深くて、まだまだ勉強することがたくさん」と、夢は膨らむ。
2階に上がると、地名にちなんで「さくらの湯」と名づけた風呂がある。ここは雄大な山の風景を眺めながら我が家で温泉を楽しめる、ご主人いちばんのお気に入りだ。
週末住宅をつくろう、という夢は、当初7〜8年かけて実現するはずだった。ところがある日、本屋で奥さ
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