雑誌「チルチンびと」別冊52号掲載 福島県 ㈱増子建築工業
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96いい家をつくる工務店の事例乾燥させたものを使っている。さらに目利きの社長が材の特徴を見ながら、1棟1棟に合わせて製材しているのだ。厚美邸の軒下の長さ6間半以上の桁をはじめ、3間半以上の梁、天井に用いた杉の一枚板、建具に用いた目の詰まった杉の赤身材など、増子さんに頼んでよかった」と頷き、奥さんは「将来を見据えてバリアフリーにしてもらったので、末長くこの家で元気に暮らしたい」と微笑む。三代にわたり受け継がれてきた思いが息づく住まいで、これからの暮らしが始まる。選び抜いた材を大工が組み上げる 新築した住まいは、広い玄関を一歩入ると木の香りに包まれる。喜一さんは「建て直す以上は、本物の素材だけを使ってほしいと増子さんにお願いしました。妻と増子建築工業の本社を訪ねたところ、敷地に丸太が山積みになっていて、これだけの材を自社で持っているなら間違いないと確信しました」と話す。 増子建築工業は、自社の家づくりで使う木材は、社長自ら原木市場で丸太を買い付け、天然すべて同社で買い付け、製材したものだ。増子社長は「桁の材木は、山の中腹まで行き、よいものを5、6本伐らせた中の1本です」と話す。 こうした材を使って家を建てるのは、増子建築工業の自社大工や建具職人たちだ。同社では伝統の技を引き継いでいくために、大工や建具職人の育成を行っている。こうした取り組みにより、一貫した家づくりが可能なのだ。 後は引っ越すばかりという住まいを見て、ご主人は「思い描いていた通りの家になりました。上左/天井には杉の柾目の一枚板を張って仕上げた。上右/和室からダイニング・キッチンを見る。 下左/組子は増子社長がデザインした。 下右/和室には出窓を設けた。出窓の台の部分にも、元の家に使われていた80年生のケヤキを使っている。

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