雑誌「チルチンびと」別冊52号掲載 福島県 ㈱増子建築工業
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94いい家をつくる工務店の事例残したい」と再生することを決めた。そこで相談したのが、かねてより知り合いの増子建築工業の増子則雄社長だった。大工出身の増子社長は建物の状態を見て、蔵の再生を約束。さらに住宅についての「取り壊す際に材をとっておき、新しい家に使の間に土団子をのせて断熱効果を上げる。増子社長は「置き屋根が動くのを防ぐためにも棟木は1本物を使いたいと考え、ふさわしい材料を揃えました」と話す。「本物の蔵にふさわしい、本物の再生改修ができたと思います」と胸を張る。祖父と父の思いを引き継ぐ なまこ壁に置き屋根という伝統美を誇る蔵と、どっしりとした平屋建ての住まい。互いに引き立て合うこの2棟を改修・新築した厚美喜一さんは「もともとここには、祖父が建てた蔵と、父が建てた家が建っていました。それが震災で壊れてしまったため、建て直すことにしたのです」と話す。 築25年ほどの住宅は新築することとし、蔵は「昔からずっと守ってきたものなのでなんとかってほしい」という夫妻の願いも快諾した。「柱は100年生のケヤキで、しっかりとした良材だったので、新しい家に生かせると考えました」(増子社長)。これを聞いて、厚美さん夫妻は「祖父や父の思いを継いだ家づくりができる」と大喜びしたという。 骨董などが収められていた蔵は、崩落していた部分の壁土を落として木摺り下地を組み、その上から全面的に漆喰を塗り直した。さらに置き屋根はすべて取り替えた。置き屋根は蔵などに多く使われる工法で、天井と上左/リビングの和室の柱には、元の家のケヤキの柱を使い、穴には埋め木を施した。 上右/広々とした玄関。元の家の床柱を框の縁に活用した。 下/和室は建具を開けると玄関や広間と連続する空間になる。

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