雑誌「チルチンびと」80号掲載 福島県 ㈱増子建築工業
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「杢」の設計を師である泉幸甫さん とともに行って以来、増子建築工業 の顧問設計士を務めている。「県産 材を使って職人の手わざを見せると いう増子建築工業のモットーを生か しつつ、デザイン性の高い設計を心 がけています」(伊藤さん)。熊田さ んの家でも、長さ4間半の梁が見事 なリビングなど、増子建築工業のこ だわりが洗練されたデザインとして 昇華されている。  熊田邸の和室とスタディコーナー に取り入れられた障子は、和の住ま いの美しさを際立たせる。「障子を はじめとする建具は、住まいに欠か せないもの」と、建具の重要性を日 頃から唱える増子社長は、建具に関 する技の継承をめざして、人材育成 と設備の導入に取り組んでいる。「こ れまでお願いしていた建具職人には 後継者がいないので、自らやるしか ないと、1年前から若い大工を建具 職人のもとで修業させています。建 具製造のための機械を導入したのも その一環です」。  原木の買い付け、製材、さらに建 具製造| これまでの大工の範囲 を超える新たな分野に取り組む増子 建築工業。その源には「自社が理想 バスルーム(左)やキ ッチンカウンター壁面 (右)などに、アクセ ントとして名古屋モザ イクの色鮮やかなタ イルを配している。 日当たりのいい場所 に、客間としても使え る和室を設けた。繊 細な障子の組子が空 間のデザイン性を高 める。建具の材はす べて、原木市場で買 い付けたもの。 天井が高いため、空間に広がりが生まれる。左手の建具の奥 が和室。 P170 とする住まいを、確実にお客さまに 届けたい」という増子社長の願い がある。「慢性的な職人不足に加え、 東日本大震災の復興需要による人手 不足も手伝って、家づくりの現場で もコストが上がったり工期が遅れる といった状況がある。適正な値段で 工期を守りつつ、県産材で大工技の 光る家を建てるためには、自社でで きることを増やすのがいちばん確 実」。挑戦を続ける増子建築工業の 今後に、ますますの注目が集まる。 左から、熊田敦也さん、伸子さん、大 我くん。雄大くんは野球の練習で不在 だった。右に増子社長、増子則満さん、 則博さん。 上:建具の枠の継手の部分 にほぞ穴を開ける。機械は 昭和30 年代のものを廃業 する建具屋から譲り受けた。 左2点:70 歳近い職人の もとで修業しながら、自社 でも加工を始めている。 下:左から、入社3年目の 有馬正智さん、長澤慧さん と、大和田大三専務。 植栽はこれから敦也さんが少しずつ 整えて行く予定。「夏に庭でバーベ キューするのが今から楽しみです」。 上:明るく使いやすい洗面室。 右2点: トイレには、アイアン作家・成田理(さ とし)さんのペーパーホルダーとタオル かけを伸子さんがセレクト。 手すりの格子の太 さや間隔など、細 部にまで配慮され たデザインのささ ら桁階段。踏み板 とささら桁は松。

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