雑誌「チルチンびと」68号掲載 熊本県 ㈲金子典生工房
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136 しは順調に進んだという。   家づくりにあたっては、「せっかくなので、可能なかぎり自然素材を使ってもらいました」と華代さんが言うとおり、住まい全体に小国杉がふんだんに使われている。また軒を深くとることで、光や風を住まいに取り入れている。夏は通風で、冬は薪ストーブを活用することで、エアコンに頼らない暮らしを実現。さらに2階にはNPO活動の一環である学童保育の場として、多目的なオープンスペースを設けた。   29歳で独立してから30年間近く、天然素材の家にこだわり続けてきた金子社長。「独立当初は合板を使わないことで変人扱いもされたよ」と笑うが、石村さんとの家づくりでは、通じあうところが多かったようだ。「これまでは住まいの素材については徹底していたけれど、食も大切な んだと思うようになった」と、内覧会に来たお子さんに出すジュースを、オーガニックのものに代えるなど、食に関してもいっそう配慮するようになった。また、石村さん夫妻の活動に共感し、今では「生活と教育」の理事も務めているそうだ。取材当日は、学童保育の子どもたちが10人ほど集まり、賑やかにヨモギ団子をつくっていた。その光景を眺めながら、「勤め先には遠くなりましたが、静かさや自然など、代えられないものがここにはありますね」と秀登さんは話す。   竣工して1年が過ぎた石村さんの家―そこは、家族にとってはもちろんのこと、地域にとってもかけがえのない「学びの場」に育ちつつあった。

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