雑誌「チルチンびと」102号掲載 熊本県 ㈲金子典生工房
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189るように。食感と味の幅が広くなり食事を楽しんでいる。何年も不眠が続いていたご主人もこの家でぐっすりと眠りにつけるようになった。「どんなに外でボロボロに頭が痛くなっても家に帰りさえすれば治ると、安堵できる場所ができました。要望の一つひとつが僕らにとっては健康に関わる大事なことだったので、柔軟に対応していただけたことに感謝です」(ご主人)。「過敏症を発症して10数年、いつかは暖かくて窓を閉めて安心して暮らせる家に住むのが夢だったんです。やっと安心できる家を手に入れて真っ暗な深海から浮上してきた感じです」(奥さん)。長年の病に悩んできた夫妻に、1軒の家が希望をもたらした。かるほどでした」(ご主人)。有害化学物質を含むものは使わず、通常は接着剤を使うところも現場棟梁が時間をかけて釘打ちで対応をした。天井にはパテ処理のいらない節のない木材を使用。中でもいちばん目を引くのは棟梁の手づくりした木製のキッチンだ。奥さんの背丈に合わせた設計をしており、天板にもステンレスを使用していない。リビングにあるイエルカの薪ストーブ「小梅」は、塗装を施していないため、塗料のにおいもない。夫妻が愛用する宝物だ。「うちで建てた家に実際に触れてもらい、材料も一つひとつにおいを嗅いでもらいながら、試行錯誤の家づくりでした」(金子典生工房・金子美智夫社長)。しかし、アレルギーや過敏症に対して何か専門的な策を講じたわけでない。良質な無垢材と金子典生工房が当たり前にしてきた住み手と寄り添う家づくりが建主に心身の安心をもたらした。サツマイモしか食べられなかった時期が長かった奥さんだが、今では小麦や肉類も食べられるようになり、塩しか使えなかった調味料も、砂糖や醤油も使え所在地:熊本県家族構成:夫婦敷地面積:674.27㎡延床面積:94.39㎡竣工:2019年4月(工期2018年11月~2019年4月)設計:㈲金子典生工房施工:㈲金子典生工房構造形式:木造軸組工法主な外部仕上げ:屋根(瓦葺き)        外壁(塗り壁)主な内部仕上げ:内壁(塗り壁)薪ストーブ:イエルカ 小梅(施工会社:㈲ナガタ板金)67810取材・文=佐藤友美1F2Fキッチン浴室冷蔵庫棚洗面トイレ収納洋間洋間洋間収納収納収納書斎玄関ダイニングピアノパントリーガスオーブン リビング脱衣室ウッドデッキバルコニー9吹き抜け薪ストーブ

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